農業の面でも、ロシア、ウクライナの両国はヨーロッパの穀倉地帯にあたり、小麦やそばの世界有数の産地で輸出国だ。
日本は両国からの小麦の輸入はほとんどない。しかし、世界的に需要が逼迫しており、小麦の約9割を輸入に頼っている日本としては、さらなる価格高騰を覚悟しなければならない。
一方、日本はそばも約8割を輸入に頼っていて、輸入の多い順に、中国、米国、ロシアとなっている。ロシアからの輸入は1割程度であるが、やはり戦争の影響を免れられない。
日本の食料自給率は、農林水産省の発表によれば、カロリーベースで37%、生産額ベースで67%(20年)。G7ではカロリーベースでダントツ最下位であり、生産額ベースではドイツと英国をわずかに上回っているが下位にあることは間違いない。
品目別でも、カロリー、生産額共にほぼ100%に達しているのはコメくらい。小麦はカロリー、生産額共に2割弱なのである。パンやラーメン、うどん、パスタばかり食べている人にとっては、物価高がこれからますます身に染みるであろう。
同じく多くを輸入に頼っている、食用油や牛肉の価格高騰も周知の通り。
魚介類も日本は海に囲まれているにもかかわらず、カロリー、生産額共に5割程度と意外に低い。
ノルウェー産サーモンのような、和食文化に根づいた世界的なマーケティングを行っているケースならば安定した輸入先として信頼できるが、今回のように予期せぬ戦争の勃発で、スムーズな貿易ができなくなることがある。日本の食料自給率が低すぎるから、サーモンが足りないと慌てふためいてしまう。信用に足るパートナー国と揺るぎない関係を築きながら、自給率を高める努力が必要だ。
コロナ禍からの回復過程おける世界的な供給不足に、ロシアのウクライナ侵攻が追いうちをかける形で、食料価格高騰が家計を直撃している。この事態は日本人の食事の在り方を、「輸入頼みから国産と輸入のベストバランスへ」「小麦ベースからコメベースへ」といったように、生産段階から見直すきっかけになりそうだ。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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