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日本企業のサステナビリティ(ESG)開示に関する誤解と収益機会フィデリティ・グローバル・ビュー(2/4 ページ)

» 2022年06月03日 09時44分 公開
[井川 智洋, ジェレミー オズボーンフィデリティ投信]
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ディスカウントの背景にある文化的な理由

 レーティングにおける差異は文化的な問題に因るところが大きく、時間の経過とともに修正されていくとフィデリティでは考えます。日本では歴史的に自ら実績を強調するような姿勢を控えるという文化があり、企業においてもそのような姿勢は地に足を付けた経営スタイルにはそぐわないと考えられてきました。そのため、日本の経営者は他の地域と比較して自社のサステナビリティに係る実績に関して控えめに説明する傾向がありますが、これはより洗練された企業広報や情報開示に慣れているグローバル投資家からの不利な評価につながります。

 別の問題として言葉の壁があげられます。日本企業、とりわけ小型株企業は英語の報告書を発行していません。一方、欧州では小さな企業でもほとんどが英語で報告書を作成します。またESG評価機関では日本に拠点を置くアナリストがあまりなく、日本企業をカバーすることが難しくなっています。その結果、意図せず、日本企業にしばしば不利が生じています。

 フィデリティは日本企業とのエンゲージメントを通して、こうした例をいくつも見てきました。日本企業はサステナビリティについて真剣に考え、ESG課題に取り組み、欧州の企業に追いつき追い越そうとしていますが、問題はこうした情報に投資家がアクセスできるようになっていないということです。日本企業は適切な企業戦略やオペレーションを有していますが、投資家が企業を正しく評価するための情報開示の重要性を十分に理解していません。ただ、状況は変わりつつあります。

 投資家を惹きつけておくには、情報開示方針の進展やサステナビリティ・レポートの発行が必要であると認識する日本企業が増えています。フィデリティはこうした企業の経営陣との対話を通じて、この課題に積極的に取り組み、自社の情報開示方針を見直そうとする企業の姿勢を感じています。 45億米ドルの時価総額を誇る総合化学メーカーの日油株式会社は、財務目標とサステナビリティの双方について情報開示を進展させている好事例です。

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