DeNA系列のスタートアップ、スマート修繕(東京都渋谷区)は6月8日、マンションなどの大規模修繕工事の一括見積サービス「スマート修繕」の提供を始めた。マンションの管理組合は、スマート修繕を通じて複数の工事会社に見積を依頼できる。コストの低減だけでなく、業界に渦巻く談合など不正行為問題に対応することを狙う。
国内に675万戸あるといわれる分譲マンションは、10数年に1回、外装や屋上などの補修工事、いわゆる大規模修繕が必要となる。一戸あたりの工事金額は平均で100万円以上といわれており、市場規模は6000億円にのぼる。
一方で、住民からなる管理組合は素人であり、工事の発注の精査には限界があった。そのため、管理を委託している管理会社や、建築士事務所などをコンサルタントとして雇い、発注や契約内容のチェックをサポートしてもらうのが普通だ。
しかし「管理会社と管理組合は利益相反の関係にある」とスマート修繕の豊田賢治郎社長は言う。創業のきっかけは、豊田氏自身が管理組合の理事長となったときに感じた不信感だ。管理会社から不必要な工事を提案されたり、修繕計画の値上げを打診され、不必要な出費となりかけた。
背景には、業界に根強い談合やリベートなどの問題がある。管理会社は組合側が工事の実態が分からないことを背景に、過剰な工事を提案することがある。また、本来中立であるはずのコンサルタントも、特定の工事会社に発注してリベートをもらうという構図が常態化していると指摘されている。
「談合やリベートを駆使するようになり、費用が2倍になることさえある。利益が業界内で山分けされてしまっている構造だ」と豊田氏は言う。
こうした不適切なコンサルタントを見つけられればいいが、リベートに手を染めるコンサルタントほど、管理組合が支払うコンサル料を安く抑えてくるため、コンペで選ばれやすい。コンサルタントが管理組合の適切な代理とならない構造が、ここにはあった。
この構造の打破を目指すのが、スマート修繕だ。管理組合から要望をヒアリングし、複数の工事会社に相見積りを依頼する。出てきた見積は分析し、項目ごとの差分をまとめて管理組合に提出する。さらに契約書についても重要条項をピックアップして判断しやすくするなど、管理組合側に立ったサービスを提供する。
対応する工事会社は、独立系のみ、年商10億円以上の中堅を中心に、30社を集めた。大規模修繕業界は、1億円以上の工事会社を集めても150社程度だと見られる。当初から全国展開し、タワーマンションも含め、どんな物件にも対応する。
管理組合側に立って公正中立であることを、改めて目指そうというサービスだ。収益モデルとしては、成約時に工事会社から受注額の数パーセントを受け取る仕組み。自身が不正を起こさないために、当初から「公正取引宣言」をサイトに掲載し、もしも不正があったら賠償を行うことを明示するほか、定期的に社外取締役が入金額の監査を行うなど、安心感の醸成に努めている。
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