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「フリーランス」の響きはいいけれど……驚くべき“脱法契約”の実態働き方の「今」を知る(4/6 ページ)

» 2022年06月10日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

「QB HOUSE」の事例

QBハウスの公式サイトより

 10分間という短時間、かつ税込1200円という低価格でヘアカットサービスを提供する「QB HOUSE」においても先般、理美容師の契約形態に問題がある旨が報道された。同社では一部店舗(全店舗の約3割)において、本社が理美容師を雇用するのではなく、本社と業務委託契約を結ぶ個人事業主(QB HOUSE内で「エリアマネージャー」と呼ばれる)が理美容師を雇用する、いわば「社員が社員を雇う」という異様な形態を取っていることが明らかになったのだ。

 直接の契約関係にない本社は、理美容師に対する雇用責任を免れる一方で、理美容師の中には、「本社と契約した」と誤認する人もいたという。またエリアマネージャーと雇用契約を締結している店舗の中には、社会保険未加入、残業代不払い、有給取得不可などの深刻な労務問題が生じている店舗も一部あると報道された

「ボディワーク」の事例

ボディワークの主力ブランド「ラフィネ」、公式サイトより

 全国でリラクゼーションサロンを展開している「ボディワーク」でも同様の問題が取り沙汰されている。同社のセラピストは業務委託契約で採用され、採用ページを見ると「リラクゼーションセラピスト」「リラクゼーションスペースでのお仕事」と曖昧な記載しかない。

 一見する限りでは、セラピストとしての技術提供と接客によって出来高制の報酬を得られるように受け取れ、法的にも問題ないように映るのだが、内部関係者の告発によると、実質的には会社の指揮命令下で労働者としての業務遂行を求められ、違法性が疑われるという。具体的はこのようなものだ。

  • 「業務委託契約なので雇用関係は存在しない」という建前だが、セラピストは店舗のシフトに合わせて勤務する必要がある他、開店・閉店に伴う事務作業、清掃や電話応対、報告書作成など、施術以外の業務にも対応する必要があることから、実質的な労働者性が疑われる

  • 業務委託費用は施術時間に準じているため、施術以外の店舗運営業務に従事している分にはセラピストに収入が発生しない仕組みとなっている。また、業務委託でありながら休日取得やシフト変更に了承が必要であったり、身だしなみにも子細なルールが存在したりなど、労働者並の拘束が存在している

  • 「無料」と銘打っている研修についても、テキストや検定料、実際に店舗で客として施術を受けるといった実費負担が多く、研修後一定期間内に退職した場合は、1受講科目あたり数万円の研修費用を支払わなければならない

 業務委託であるにもかかわらず、細かい指示をおこなって社員のように都合よく使い、一方で雇用関係にあれば一般的に会社が負担する研修費用などは実費請求する。まさに、業務委託の都合の良い部分だけをとって、リスクは働く側に押し付ける、悪意あるやり口といえるだろう。

 本件を巡っては、違法性が疑われる契約条件について本部に確認をおこなったセラピストが契約解除になったことで、外部のユニオンと係争があったことが報道されている。

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