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「フリーランス」の響きはいいけれど……驚くべき“脱法契約”の実態働き方の「今」を知る(1/6 ページ)

» 2022年06月10日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症は、わが国の雇用環境にも大きな影響を及ぼした。

 厚生労働省が発表した最新の集計結果によると、新型コロナに起因する解雇や雇い止めは13万2000人を超え、雇用調整の可能性がある事業所も全国で13万7238カ所となっている(2022年5月20日時点)。ただこの数字はあくまで国が把握している人数にすぎず、実際の失業者数はさらに多いとみられる。

 大企業も例外ではない。2021年に早期・希望退職募集を開示した上場企業は84社と、2年連続で80社を超えた。このような事態は、リーマン・ショック後の09〜10年以来11年ぶり。新型コロナ感染拡大の影響を強く受けた鉄道、観光関連、アパレルのほか、製造業などを中心に、リストラ実施企業数は高い水準で推移している。

 このような雇用環境激変期において、リストラや雇い止めほどは報道される機会がないものの、着実に進展しているブラックな手口が存在する。それが「フリーランス」という、一見華やかな働き方の裏に潜む、業務委託の仕組みを悪用した「脱法的労働契約」だ。

一見華やかなフリーランスという働き方。その裏に何が……?(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

職種を問わず、年々増えるフリーランス

 わが国に存在する働き方には主に、正社員として勤務先に直接雇われ、雇用期間に期限のない「正規雇用」と、派遣社員や契約社員、アルバイトのように一定の雇用期間が決まっている「非正規雇用」、そして会社や団体などに所属せず、個人で仕事を請け負う「フリーランス」という3種類がある。

 このうち、フリーランスがほかの2つと決定的に違うのが「会社組織に雇われていない」ということだ。芸能人や音楽家、作家など、専門的な技術や能力が必要とされる職種が想起されやすいが、昨今この働き方はYouTuberやWebデザイナーのほか、フリーランス業務のマッチングサービスが拡充したことにより、ITエンジニアやUberEATS配達員など、さまざまな職種にも広がりを見せている。

 「フリーランス実態調査結果」(内閣官房日本経済再生総合事務局)によると、日本のフリーランス人口は約462万人。さらに、フリーランス業務のマッチングサービスを手掛けるランサーズが発表した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によれば、21年10月時点でフリーランス人口は約1577万人となっている。

 後者の数字には、正社員でありながら副業としてフリーランス業務を行っている人も参入しているが、いずれにせよフリーランスとして働く人は年々増加している状況だ。

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