そもそも、「さんぽセル」はどのような経緯で生まれたのか。考案されたのは21年8月だ。
栃木県日光市にある廃校舎「旧野口小学校」に夏休みで集まった小学生たちによって考え出された。その子どもたちにきっかけを与えたのが地域の子どもたちの面倒を見ていた、大学3年生の太田旭さんだ。太田さんは、「全てのきっかけは『廃校舎にゲーム部屋を作りたい』という子どもの要望だった」と振り返る。
「旧野口小学校は、地域のスポーツ少年団が校庭を利活用している場所で、旧学区内以外の広い範囲から子どもたちが集まれる場所だったんです。僕はそこに集まる子どもから要望を聞いて、それをお手伝いする活動に21年から携わっていました。それで、21年の夏休みに子どもたちが集まったときにみんなで任天堂のゲーム機『Nintendo Switch 』を大画面で遊べるゲーム部屋が欲しいという声を聞き出したんです」
廃校舎にゲーム部屋を作るには、ゲーム機本体のほか、それを大画面で映し出すテレビやプロジェクターが必要だ。廃校舎を利活用する取り組みの一環とはいえ、そのお金はどこにもない。
「それで、どうすればそのお金が集められるか、子どもたちと一緒に考えることにしたんです」(太田さん)
悟空のきもち THE LABOはこれまでにも、子どもたちから要望やアイデアを聞き出し、それを製品化する取り組みを続けてきている。21年1月には、園芸用の花を長く咲かせられる液体「花びら液」を、21年6月には食べられるマスク「マスクパン」を子どもたちと一緒に開発している。
製品開発だけでなく、福岡県の無人島に子どもたちとツリーハウスを建てたり、既存の旅館で学生と新たな宿泊プランを考案したりするような取り組みもしている。今回の「さんぽセル」も、この活動の一環として製品化された商品というわけだ。
その糸口として、太田さんは小学生達から「今何に困っているのか」ということを聞き出していった。「困りごとを解決する」のが、マーティングの鉄則だからだ。太田さんはこう続ける。
「それで出てきた困りごとが、『ランドセルが重い』というものだったんです」
ランドセルをどうすれば軽く持ち運べるかというアイデアは、「ランドセルにタイヤを取り付ける」という方向ですぐに決まったという。発案初日のうちに、廃校舎にあったキャスター付きの事務用椅子の脚部分を使ってランドセルを運ぼうとする子どもの姿が写真にも収められている。
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