一方で、なぜ「ランドセルが重いか」を調べていくと、意外なことが分かったという。太田さんは話す。
「実はいまの子どもたちは、歴代の小学生の中でも一番重いランドセルを背負わされていることが分かってきました。理由の一つは、『脱ゆとり教育』で教科書の量が多くなっていること。さらにもう一つが、これは地域差があるものの、学校教育のICT化によって教科書に加えタブレット端末やノートパソコンの持ち運びも必要になっています。このタブレットなどの重さが負担となっている点です」
その重さは、20年前で「ゆとり教育」中の02年と比較すると、2倍になっている調査もあるという。
大学で医学部に通う太田さんによると、さらにこのランドセルの重さが子どもたちの身体に悪影響を及ぼしていることも分かってきたという。
「成長期の子どもに重たいものを持たせると成長が阻害されたり、精神面にも悪影響を及ぼしたりするという米国の論文があり、日本でもこれは『ランドセル症候群』として紹介されています。これは子どもたちの要望を聞いてあとから分かったことでもあるのですが、小児科医志望の自分としてもなんとかしてあげたいと強く思いました」
「さんぽセル」商品化に向け、栃木県内の企業の協力もあおいだ。ランドセルをキャスター化する上で、子どもたちでも取り回しがしやすく、かつ十分な強度を保つため、真岡市にある製造会社「アオキシンテック」に2週間の“修業”にも訪れたという。
「アオキシンテックさんの工場ではボール盤をはじめ、さまざまな工作機械にも触れて試行錯誤しました。フレームの強度を保つため、アオキシンテックさんには多くの協力をしていただいています」(太田さん)
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