トヨタ自動車は5月、電気自動車(BEV)「bZ4X」を法人向けにリースで販売し、個人向けをトヨタ車のサブスクリプションサービス「KINTO(キント)」で発売した。
トヨタは現在、プリウスに代表されるハイブリッド車(HEV)などを販売している。これから本格化するカーボンニュートラル(CN)の時代を見据え、BEVのみならず、水素エンジン車などを全方位で準備しているのだ。
HEVの代表格であるプリウスが発売されたのは1997年だ。当時から地球温暖化は叫ばれていたものの、深刻に捉える人は、まだ少なかった。少なくともCNという言葉が一般化していなかったのだ。
多くの日本人は忘れているかもしれないが、もともとプリウスはCNのために生まれた車ではない。石油が枯渇するかもしれないという「省エネ」に絡む燃費競争から生まれた技術革新だった。
当時からポスト内燃機関の最終形は電気自動車(EV)だろうといわれていて、HEVはそのつなぎ役という位置付けだった。
それから20年以上が過ぎ、地球温暖化が人類の存亡に関わることを世界の人々が自覚したことで、フェーズが変わった。自動車業界では材料の採取、部品や車体の製造、走行、廃棄というライフサイクル全てで、二酸化炭素(CO2)が発生している。温暖化防止の観点からCNに取り組まない選択肢はない。
東日本大震災後の日本社会では原子力発電所(1kWhあたり10.1円)の再稼働は容易ではない。ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)発電所の状況をみると、発電所自体を持つことは有事に、かなりのリスクとなることも分かった。
一方で原子力発電にはCO2を発生させない強みがあり、CNの観点では優れた発電方法だ。現在、主力の火力発電(同12.3円)は、原材料を海外からの輸入に依存するリスクがある。有事には原子力発電のような恐怖はないものの、CO2の排出量を考えると、いつまでも主力の発電源にするわけにもいかない。
また、再生エネルギーは有望ではあるものの、太陽光が同15.8円、風力が同19円と発電コストが高すぎる現実がある。
日本では賃金が上がらない中で、消費者は「自分はどこまで光熱費の上昇に耐えられるのか?」について、地球環境を加味しながら考えないといけない。政府も、光熱費の上昇をどれだけ抑え、あまり機能していない賃金上昇政策をどうするのかを改めて練る必要がある。
3月に福島県沖で発生した地震によって、火力発電所が稼働を停止したことから停電危機が訪れた。もしBEVが一気に進んだところに、大型の地震が発生したらどうなるのか――。そんな仮定が頭をよぎる。かといって原発の再稼働も現実的ではなく、もはや堂々巡りに近い。
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