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トヨタが仕掛ける 次世代パワートレインの「全方位」戦略カーボンニュートラルを見据え(2/5 ページ)

» 2022年06月16日 06時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

ルールメイキングする欧州企業

 自動車産業調査会社マークラインズ(東京都千代田区)の調査によれば、日本で製造される自動車は、コロナ前の19年には約922万台。その半分の460万台が海外に輸出されたものだ。自動車の製造品出荷額は70兆円で、製造業全体の2割を占める。自動車の貿易黒字額は15兆円。日本の資源輸入額が16兆円だから、自動車業界が、そのほとんどを稼いでいる計算だ。

Mid Box

 EVにシフトしていくことは、コモディティ化の余地が大きい。技術のすり合わせがなくなり、部品点数の3〜4割が減るといわれているからだ。すると現在550万人いる自動車業界で働く人のうち100万人の雇用が失われる可能性がある。つまり自動車産業が転べば、日本にとって大きな収入源を失うことになるのだ。では世界でEVは、どのくらい普及しているのか。

 「これからのポストICE(内燃機関搭載車)はBEV」と宣言している中国、米国、ドイツ。ICEの割合は、それぞれ91%、94%、79%と高い。BEVは4%、2%、6%だ。逆に言えばBEVの一本足打法に思い切ってシフトできるともいえる。一方で日本は、ICEが66%、BEVが1%、HEVが32%だ。

SPORTS EV

 欧州はHEVもディーゼルも諦め、国レベルでEVにシフトすると腹をくくった。彼らにとってはポストICEの議論は終わっているのだ。投資家にはCNに取り組んでいる企業は、永続的に成長するという考えが支配的になってきている。その考えに、これまで「トヨタは乗り遅れている」と、みられていた状況があった。

 トヨタには、その潮流に引っ張られている感覚はあるのかもしれない。または、欧州は自分たちの強みを生かしたルールメイキングをし、「CN戦争」を仕掛けてきている感覚があるのだろう。

 だが、このCN戦争の構図が、そっくりそのまま日本や米中に当てはまるかは定かではない。トヨタがグローバルの潮流に対して、後手を踏んでいるかというと、決してそうは言えないのだ。

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