クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ステップワゴンが予告から半年も売らなかったワケ ホンダ、ロング・ティーザーの狙い 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)

» 2022年06月21日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]
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目標5000台に対し、受注2万4000台の大成功

 ちなみに、ホンダの広報担当者は口にしませんでしたが、それ以外にも理由の1つにライバルの存在があったはず。それは、トヨタのミニバンである「ノア/ヴォクシー」。こちらの発売は1月13日です。その正式発表の前に「ホンダからもミニバンを出しますよ」とアピールしようという狙いもあったことでしょう。

トヨタが1月に発売したノア/ヴォクシー(トヨタ資料)

 とにかく、そんなロング・ティーザーによって「ステップワゴン」は、どれだけ売れたのでしょうか。ホンダ広報によると、「2月の先行予約で1万8000台、発売3週間ほどの6月中旬までに合計2万4000台超を受注」したとか。これは月販5000台を目指す「ステップワゴン」としては「大きな手ごたえ」だと担当者は言います。

 2月の時点で1万8000台は、相当に大きな数字です。なんたって発売前3カ月も前ですから、当然、納車待ちは3カ月以上になります。それでも欲しいという人が、これほどたくさんいれば、半年も前にティーザーを実施したのは、大正解だったといえるでしょう。

 また、最近のクルマは、作ったものを売るのではなく、注文を受けたクルマを生産するのが主流です。注文されてから作るので、当然、時間がかかります。しかも、最近は半導体不足で生産が滞りがち。さらに納車までの時間が長くなっています。そういう意味でも、なるべく早く情報を出して、早めに注文を集めることができれば、生産もスムーズにでき、結果的に、ユーザーの手にクルマが渡るまでの時間が短くなる可能性もあります。同じ半年待ちでも、正式発表からの半年後ではなく、半年前に予約して正式発表と同時に納車されるほうが嬉しいはずです。

(ホンダ資料)

 ちなみに筆者が今年に購入した現在の愛車も、ティーザーで発売を知り、正式発表前にディーラーに駆け込んで契約。正式発表から、それほど待たずに納車されました。

 販売側にもユーザー側にもメリットがあるのであれば、今後、今回のようなロング・ティーザーはもっと広く実施されるかもしれません。実際にホンダ広報担当者も「いろいろと検討中です」と言います。どんなクルマで実施されるのかが楽しみです。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


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