2010年に生産労働人口約2.8人で高齢者1人を扶養していたが、30年になるとこれが約1.8人で1人を扶養することになる。ただでさえ負担が重くなっていくところに、日本は年功序列で若者は低賃金という常識がビタッと定着しているので、若者からすればもはや社会保障負担のために働いているような感じになってしまう。
もちろん、これも日本政府が諸外国のように最低賃金を引き上げて、賃上げの流れを後押ししたり、ベーシックインカムを導入したりすれば解決できる話なのだが、「賃上げしてくれた企業は税制優遇します」なんてヌルい政策しかできない日本では夢のまた夢の話だろう。
つまり、30年の若者は、10年の若者に比べてファッションや旅行などの消費をする余裕が格段になくなっている可能性が高いのだ。
さて、このような近未来がほぼ確定している中で、これまでのような「あらゆる世代に安くて質のいいモノを提供して、幅広い支持を得る」というファストファッションが通用するだろうか。
通用するわけがない。消費者の数は減っているので、大量生産、大量消費を前提としたビジネスモデルはガラガラと崩れていく。特に20〜30代は数がガクンと減って貧しくなるので、この客層がカバーしていた売り上げはゴッソリと削られていくのだ。
では、このような事態を避けるためにはどうすべきか。
まずやらなくてはいけないのが「価値向上」だ。日本国内の消費者の数はもう二度と増えていかないので、企業が成長を続けていくには単価を上げていくしかない。といっても、ただ価格を上げるだけでは先ほど申し上げたような消費者からバッシングを受けるので、これまでのファッションに新たな価値を乗っけていくしかない。
そして、それと並行してやらなければいけないのは、「年齢層の引き上げ」である。これまであらゆる世代に向けていたと言いながらも、なんだかんだ言って、やはり若者をメインにとらえていた部分はある。その発想をガラリと変えて、日本人の3分の1を占める65歳以上や、人口ピラミッドの山である50代後半が好みそうなシンプルで無難なデザインのものを多くしていくのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング