ユニクロの「フリース1000円値上げ」は正しい、なるほどの理由スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2022年06月21日 09時48分 公開
[窪田順生ITmedia]

ユニクロの「高くてダサい戦略」

 ここまで聞けば、勘のいい方はもうお分かりだろう。これらの人口減少社会対応の施策というのは、まさしく近年、ユニクロがSNSなどでディスられている「高くてダサい戦略」そのものなのだ。

 実際、マーケティング的にもこの戦略は理にかなっている。

 日本では高齢者のほうが経済的に豊かだということは言うまでもない。統計的にも、20代よりも50代のほうがお金を持っていることが分かっている。フリースが1990円から2990円に値上げしても、それほど気にならない。年齢層が上がれば上がるほど、「高い」にそれほどアレルギーがないのだ。

 一般的に、高齢者になればなるほどファッションは保守的になる。中には志茂田景樹さんのような個性的なシニアもいらっしゃるが、多くの方は日常生活の中で、ベーシックで長く着られるアイテムを好む。若者から見れば「ダサい」ものだ。

(提供:ゲッティイメージズ)

 このような「高くてダサい」を受け入れる消費者が、これからの日本ではどんどん増えていくのである。「あらゆる世代に安くて質のいいモノを提供して、幅広い支持を得る」という道の先に地獄しか見えない今、こちらへと路線変更していくのは、企業の「生き残り戦略」としては極めて真っ当だ。

 という話をすると決まって、「私は60歳だけど高くてダサいなんて受け入れない!」とか「私は50歳だけどフリースに2000円なんて出せない」と反論をしてくる人たちがいらっしゃるが、ユニクロの戦略が非常に巧みなのは、ちゃんとそういう人たちも「ジーユー」でカバーしていこうとしているところだ。

 ご存じのように、ジーユーはユニクロよりも低価格帯で若者向けの商品構成となっている。そのため、広告イメージキャラクターも、中条あやみさん(25歳)と福士蒼汰さん(29歳)という20代だった。

 しかし、21年秋冬シーズンからそこに、木梨憲武さん(60歳)とCharaさん(54歳)が加わったのである。8年後、木梨さんは日本人の3分の1を占める世代のど真ん中、Charaさんも人口ピラミッドでかなり多い世代だ。

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