なぜ取得が進まないのか。それは国民にとってマイナンバーカードを取得する意義、メリットが現在見当たらないからだ。野村総研が21年8月に行った調査によれば、マイナンバーカード非保有者に対して持たない理由を尋ねたところ、「メリットが分からない」が54.9%と過半となった。
野村総研が21年8月に行った調査では、マイナンバーカード非保有者の半分が「メリットが分からない」と理由を挙げた
マイナンバーカードには、コンビニで住民票が取得できたり、自治体のオンライン申請に使えたり、確定申告などにも利用できる。しかし、ほとんどの人にとっては年に1回使うかどうかといった内容で、メリットが感じにくい。
一方で、取得手続きには役所に出向く必要があるなど煩雑だ。また、個人情報漏洩リスクについても、説明は歯切れが悪い。マイナンバーカード裏側に記載されているマイナンバーについて、「これが他人に知られるとまずいのか。どんな問題があるのか」と尋ねたところ、「基本的には知られないほうがいい。その上で、知られたからといって何か支障はない仕組みになっている。仮に見られたとしても大きな問題にはならない」(馬場審議官)という回答だ。
名前や住所も個人情報だが、必要があればこれを相手に伝えるのは一般的だし、それが人手に渡ったときの悪影響もある程度想像できる。ところがマイナンバーについては、どこまで注意して管理すべきなのかが分かりにくい。マイナンバーに関する、この漠然とした不安感が、非保有者がその理由として挙げる「個人情報漏洩リスク」(25.3%)の根幹にあるのかもしれない。
利用のメリットが感じられないだけでなく、個人情報保護に関する不安も根強い。それでも国民に普及させるために、お金で釣ろうというのが今回のマイナポイント施策だ。
野村総研の冨田勝己氏は、日本人の年間平均ポイント獲得額が1万〜2万円、クレジットカードの新規入会時のポイント付与が最大1万円相当という中で、「マイナポイントの2万円相当のポイントは、生活者にとってかなり大きい。直近は値上げがいろいろな分野で起きている。家計の助けにもなる」とコメントした。
果たして2万円分のポイント付与で、残り半分の国民は動くのか。マイナポイント第2弾は、9月がマイナンバーカード申し込みの締め切りとなる。あと3カ月でその効果は明らかになる。
- 20年実施検討中の「マイナポイント」 25%還元だが複雑さに懸念も
経産省が推進するキャッシュレス・消費者還元が始まった。消費喚起と共に、キャッシュレス推進や中小企業も支援しようという複数の狙いを持つ。さらに、20年には総務省が、マイナンバーカードの普及促進を、消費喚起とセットで狙い「マイナポイント」を計画中だ。
- 登録いまだ210万人、課題抱えるマイナポイント 諸外国の成功例に学べ
政府は18年以降、キャッシュレス社会実現に向けてさまざまな施策を行っている。「キャッシュレス・ポイント還元事業」ではキャッシュレス決済比率は上昇したが、未だ26%だ。次なる施策としてマイナポイント事業が始まるが、マイナポイントを受け取るために必要となるマイキーIDの発行数は約210万人。マイナポイント事業の上限である4000万人には遠く及ばず、期待していたほどのキャッシュレス促進の成果は得られない可能性が高い。
- マイナポイント決済手段争奪戦 5000円還元に加え上乗せキャンペーンで各社激戦
マイナポイント事業は、7月1日より事前予約がスタートし、キャッシュレス決済会社が顧客獲得に向けて早々に独自のキャンペーンを展開している。選べる決済方法は1種類で、後から変更もできないため、各社は追加の上乗せキャンペーンを行い、顧客囲い込みに動いている。
- 25%還元のマイナポイント 2100万枚のマイナンバーカードを倍増させられるか
キャッシュレス還元事業が、6月30日に終了した。政府が次に用意した還元策が「マイナポイント」事業だ。マイナンバーカードと任意のキャッシュレス決済サービス1つを紐づけることで、支払額の25%が還元される。前提となるマイナンバーカードの保有者数は2100万人。マイナポイントではこれを約2倍の4000万人に持っていく狙いだ。
- スマホにマイナカード機能搭載、なぜiPhoneは未対応なのか?
マイナンバーカードの機能がスマホに搭載されるようになる。しかし、当初はAndroidのみで、iPhoneはしばらく先になりそうだ。 なぜAndroidだけでiPhoneはまだなのか。
- スマホにマイナカード機能搭載、課題は何か?
2022年度中に、スマートフォンにマイナンバーカードの機能を内蔵することを目指し、総務省らが活動を続けている。まずはAndroidスマートフォンから搭載し、iPhoneについては最速でもその1年後以降となる見込みだ。ではマイナンバーカード機能の搭載における現状の課題はなにか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.