では、この食感チャートはどのように数値化しているのか。グミの“かみここち”を支える装置が、東京・八王子の「明治イノベーションセンター」にある。その装置が「ORAL-MAPS(オーラルマップス)」だ。
日本医科大学が発明したライセンス技術と、明治独自の解析と食品物性の評価技術を統合し制作したもので、食べ物がそしゃくによってどう処理されていくのか、一連の過程を観察する実験装置だ。2020年より本格的な運用を開始した。
装置の中心部にグミを置き、人工唾液を少しずつ流しながら下のパーツを上下に、上のパーツを水平に動かすことで食品をそしゃくする。
食感チャート2の果汁グミを使った実験を見せてもらったが、既定の回数に達した段階でグミの形はほぼ砕けていた。これが、チャート5の商品の場合はほとんど形が残った状態になるという。この実験を基に「かみここち」を数値化し、商品開発へと応用しているわけだ。
同社によると、グミを購入する層は30代前後の育児世代が圧倒的に多いという。その層を拡大するためにさまざまな取り組みを進めているわけだが、意外にも明治が展開するグミのラインアップはほとんど変わっていない。
ここ数年、SNSなどでは若年層を中心に「地球グミ」や「目玉グミ」といった変わり種の商品がブームとなったが、同社では主力ブランドの「果汁グミ」「ポイフル」「コーラアップ」などに注力し、そのブランド価値を高めてきた。吉川氏は、「本当にいいなと思って食べてもらえる商品をじっくりつくりたい」と話す。
「グミをおやつではなく、少し健康感のあるものに変えていきたいと思っています。『おいしく楽しい』を大前提に、『かむとこんなにいいことがあるよ』という思いを伝えていきたいと思っています」(吉川氏)
吉川氏は、グミを食べることは“自転車で坂道を下る感覚”に近しいと表現する。坂道を下る間はハンドル操作やスピードの加減を意識しないといけない。グミを食べているとき、頭の中では無意識に微妙なハンドル操作を行っているわけだ。
ついにガムを抜き、その弾力のように“お口の中市場”を制する勢いのグミ。「かみここち」を軸にした同社の戦略で、今後どう成長するのだろうか。
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