接続料と携帯電話料金の関係については、20年12月からドコモのahamo、KDDIのpovo、ソフトバンクのLINEMOと、MNO3社が大容量で低価格のオンライン専用プランを発表したことで、影響の大きさが注目された。
MVNO各社が参加しているテレコムサービス協会MVNO委員会は、21年1月、総務省に要望書を提出した。MNOのオンライン専用プランは、当時のMVNOのプランをしのぐ低価格、大容量であり、当時の接続料や卸料金ではMVNOが同等のプランを提供することが極めて困難だった。MNOとMVNOが同じ条件で公正に競争するためのイコールフッティング実現のために、MVNO委員会は総務省に接続料や音声卸料金の早期引き下げを要望したのだ。
それに応じてMNO3社は、オンライン専用プランによりトラフィック増が見込めること、設備効率化の取り組みなどを理由に、前年度の届出値よりも安い接続料の見込みを出した。これによって、現在のように、MVNO各社はさらに低価格のプランを提供することが可能となったわけだ。
オンライン専用プランの発表後、MVNOの要望によって20年3月に届け出た接続料の見込みより低廉化した接続料(2021年5月26日 総務省「モバイル接続料の検証について」の資料より)
MNOの届出によると、接続料は今後も下がっていく見通しだ。5Gが浸透すれば流れるデータはより多くなり、分母のトラフィックが増えていくからだ。なお、MVNOの事業に大きな影響を与えるMNOの廉価プランについては、MVNOとの公正競争を確保するために、接続料の適正性を含め、妥当なのもかどうか、スタックテストで検証されることになるようだ。妥当ではないと判断されれば、さらに接続料が低下する可能性がある。接続料はユーザーの料金に影響するだけに、今後も注目していきたいポイントだ。
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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