なぜ“交通系の話”はあまり出てこないのか 「参院選 2022」の公約イッキ見杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2022年07月04日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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鉄道関連議連の動向に注目

 いまや鉄道建設、ローカル線維持を政策に掲げる議員は少ない。票にならないからだ。なぜ票にならないかというと、有権者の関心が薄れているから。しかし、地方交通問題は重要度を増しているし、取り組んでいる議員もいる。

 国会には鉄道に関する議員連盟がいくつかあるようだ。特に14年に設立された「赤字ローカル線の災害復旧などを支援する議員連盟」の活動は、鉄道軌道整備法の改正に結びつき、11年の豪雨被害で鉄橋が流された只見線の復旧に貢献した。

 それまで鉄道軌道整備法は、自然災害で被災した鉄道路線について、赤字の鉄道事業者のみを国の支援対象としており、JR東日本のような黒字会社の赤字線は対象外だった。しかし、営利企業の当然の企業行動として、被災路線を自社復旧せず、低コストのバス転換とし、鉄道復旧に積極的にならない。議連の活動が実り、鉄道軌道整備法は改正され、黒字会社の赤字線も国の支援が受けられる。

 今年に入ってから「ポストコロナの地方創生実現のための公共交通ネットワークの再構築を目指す議員連盟」も立ち上がったという。

 多数の票に結びつかなくても、地域や国のために動く。こういう活動を得票に結びつけるために、有権者の関心を高めたい。その最も簡単な手法が公式サイトだと思うけれども、冒頭に書いたように公式サイトは軽んじられている。政治家は何をしていますか。議連はどんな活動をしていますか。

 政治の動向を伝える仕事は報道メディアの役割でもある。しかし、メディアを通す前に、自らの言葉で有権者に説明してほしい。そもそも報道は公平性が求められ、特定の政党や候補者だけを採り上げられない。「私の政策は正しい」といえるのは「あなた」だけだ。

 ともあれ、7月10日は参議院選挙だ。6月23日から不在者投票も始まっている。

 私たちは問題を共有する候補者を見定めて、まずは投票に行こう!

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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