「九州新幹線西九州ルート」の新鳥栖〜武雄温泉間について着工の見通しが立たない。
その理由の1つに「佐賀県の負担金問題」がある。佐賀県にとっては福岡へ行くにも長崎へ行くにも在来線で不満はない。佐賀〜博多間の時間短縮は15分。佐賀市から新鳥栖駅まで所要時間は12分。そこから関西直通の新幹線に乗れる。フル規格の費用負担に見合わない。
それでは、佐賀県にとって納得できる負担金額はいくらになるか。2022年2月、この問題を経済学のゲーム理論で試算した論文が完成した。執筆は大阪大大学院経済学研究科の学生(当時)の別府英俊氏だ。
結論から書くと、新鳥栖〜武雄温泉間で最も合意しやすい負担額は「国が3946億円、佐賀県が582億円、長崎県が561億円」だった。ゲーム理論が導いた数字は「佐賀県と国の負担減、長崎県の追加負担あり」だ。
現在の枠組みの負担額は「国が4157億円、佐賀県が933億円、長崎県が負担なし」だ。これは報道されている数値と異なるけれども、試算に当たり公表値から24%の事業費増加、21年基準の社会割引率4%を見込んでいる。これは国土交通省の事業評価手法で定められた数値だ。
論文はこの数字が導かれる過程を説明している。結果も重要だけど、その過程で新幹線建設の枠組みの問題点が浮かび上がる。「属地主義」と「応益主義」、隠された「県別の応益」。論文は数式が多く私には難解で、学生時代にちゃんと勉強してこなかったと悔やまれる。別府氏はそんな私のために概要版をつくってくれた。
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