佐賀県の負担金は? ゲーム理論で導き出した「九州新幹線西九州ルート」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/7 ページ)

» 2022年06月04日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

3者が納得できる範囲「コア」と唯一解「仁」

 ゲーム参加者にとって、便益よりも負担額が小さければ「プラス」であり、納得できるプロジェクトといえる。そこで3者の妥協点を探ってみよう。国、佐賀県、長崎県を頂点とする正三角形を描き、最も遠い点を重ね合わせて、3者の領域が重なったところが「納得の範囲」となる。

ゲーム理論のほとんどは「囚人のジレンマ」のような2者モデルとなるけれども、3者モデルの場合はこのような三角図が分かりやすい。費用については、頂点にとって離れた線をゼロとし、頂点に向かう高さを算定額とする(出典:大阪大学大学院経済学研究科経済学専攻 別府英俊、九州新幹線(西九州ルート)における費用分担問題 課題研究説明資料)
別府氏の図をひも解いてみる。これは国の便益と費用の範囲。試算した総費用7670億円から新幹線貸付料2580億円を引くと5090億円。国の便益は4290億円だから、それ以下であれば国は納得できる
次は佐賀県の便益と費用の範囲。佐賀県の点の反対側の線を0とし、高さを便益とする。佐賀県はこの範囲なら利点が多い
同様に長崎県の便益と費用の範囲。長崎県は現行の枠組みで費用ゼロ。しかし便益を考えればここまでは許容範囲
3者の範囲を重ねた部分が、3者ともに納得できる負担の範囲。これをコアという
ちなみに、ゲーム理論で算出した現状の枠組みを点で示すと、佐賀県の933億円は許容範囲を超えてしまいゲームは不成立。佐賀県は話し合いのテーブルにつく意味がない。与党PTが示した佐賀県660億円は、佐賀県長崎県とも納得できる。国の許容範囲は超えてしまうけれども、与党PTは国の指導的立場だから、政府内で解決すればいいことになる
別府氏の論文の図に戻る。コアを構成する交点は計算で求められる。国は2359〜4290億円、佐賀県は0〜926億円。長崎県は17〜905億円の範囲となった(出典:大阪大学大学院経済学研究科経済学専攻 別府英俊、九州新幹線(西九州ルート)における費用分担問題 課題研究説明資料)

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