コアによって、3者が歩み寄れる範囲が絞られた。ここから最適解を求める。明確に、誰がどれだけ負担すれば3者が納得するか。この計算は「仁」を用いる。これも聞き慣れない言葉で、医療漫画や中国思想を連想するけれども、ゲーム理論の「仁」は、コアの考え方を進めて、3者の不満を最小化し、1点に絞り込む。
これも筆者の学力ではついていけないので、結果を見てしまおう。というより、最初に結果として示した「国が3946億円、佐賀県が582億円、長崎県が561億円」は、仁で算出した数値だ。
仁はコアの範囲から、すべてのゲーム参加者が納得する数値を絞り込んだ結果。というより、仁の手法で計算すると、結果が1点に絞り込まれる(出典:大阪大学大学院経済学研究科経済学専攻 別府英俊、九州新幹線(西九州ルート)における費用分担問題 課題研究説明資料)論文では佐賀県が並行在来線を負担する場合と負担しない場合の2例を想定している。ただし与党PTは19年の長崎県のヒアリングで「JR九州による経営維持」と要望している。21年5月21日の国と佐賀県の「幅広い協議」でもこの方針は変わらず。JR九州は「必ずしも経営分離を前提としない」としつつ、「同意したわけではない」という態度だ。
ちなみに論文では「経営分離された場合、新幹線建設に関しては佐賀県の便益が減る」。したがって負担限界も782億円に下がり、コアが小さくなる。しかしゲームの外側で総負担額は増える。並行在来線の費用が加算されるからだ。総費用としては630億円となり、経営分離しない場合の582億円より高くなる。
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