ここまで「佐賀県が納得する負担額」を求めてきた。しかし、論文が成立する過程で、現在の新幹線建設の枠組み、いや、鉄道新線建設、赤字ローカル線の自治体負担について、重要な問題提起があったように思う。
そのキーワードは「属地主義」と「応益主義」だ。
属地主義は「線路がある自治体が負担すべき」という考え方だ。いままで新幹線はほとんどの地方自治体で切望、歓迎されてきた。「建設費も負担します。並行在来線も引き受けます。だって新幹線があれば、負担を上回る便益がありますから」というわけだ。しかし、今回の佐賀県のように「負担と便益が見合っていない」という声が上がった。
最も便益を受ける地方自治体の線路は短く、便益の少ない地方自治体の線路は長い。それでも線路の距離に応じて負担額を決めるという枠組みは正しいだろうか。属地主義はもう通用しないのではないか。
これはローカル線問題にもいえる。幹線のA駅から分岐して終端駅のB駅を結ぶローカル線がある。このローカル線はA市の区間が2割、B町の区間が8割。そして乗客のほとんどはB町の人々だ。このローカル線で存廃問題が起きたとき、属地主義で考えればA市が2割を負担する。しかし、応益主義で考えればB町の人々にとって必要で、A市にとって必要ではない。このとき、A市は支援金に応じるだろうか。
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