政府、原発稼働本格化 今冬までに最大9基、岸田首相「電力消費量の1割に相当」 エネルギー安定供給目指す今夏の電力供給にはめど

» 2022年07月15日 06時00分 公開
[ITmedia]

 電力需給が逼迫(ひっぱく)する中、政府が電力の安定供給に向け、原子力発電所(原発)の本格稼働に着手する。岸田文雄首相は7月14日の記者会見で、今冬のエネルギーの安定供給を実現するため、稼働中の5基を含め、原発を最大9基稼働する方針を明らかにした。日本全体の電力消費量の1割に相当するといい、岸田首相は「電力の安定供給を確保できるよう全力で取り組んでいく」としている。

photo 記者会見した岸田首相(出典:首相官邸公式YouTubeチャンネルの動画)

電力の安定供給にめど 「無理な節電せず、クーラー上手に使って」

 岸田首相は会見で「国民の皆さんの協力もあり、全国10以上の火力発電所の運転が再開し、電力の安定供給を確保する見通しが立った」と明言。「熱中症も懸念されている。無理な節電をせずに、クーラーを上手に使いながら夏を乗り越えてほしい」と国民や企業に呼び掛けた。

photo 今夏の電力供給にめど(提供:ゲッティイメージズ)

過去3年で最大のエネルギー供給量に

 ただ、電力消費量が増加するのは夏だけではない。冬も暖房機器の使用で消費量が増える。政府によると「今冬については再度、需給逼迫が懸念されている」という。こうした事態を防ぐため、萩生田光一経済産業相に原発の稼働を指示したと明らかにした。経済産業省はエネルギー施策の所管省庁だ。

 「ピーク時に余裕をもって(電力を)安定供給できる水準を目指し、火力発電所の供給能力を追加的に10基を目指し、確保するよう指示した。これらが実現すれば、過去3年間で最大の供給を実現できる」(岸田首相)

 岸田首相は「この冬のみならず、将来にわたって、電力の安定供給を確保できるよう全力で取り組んでいく」としている。

稼働中の原発は5基

 資源エネルギー庁(経産省)の資料によると、現在、稼働中の原発は5基(7月13日時点)。定期メンテナンスなどを理由に停止中の原発が5基あるという。政府は、これら停止中のものを中心に、エネルギーの安定供給に活用するものとみられる。

photo 大飯原発では3号機が稼働中(出典:関西電力公式Webサイト)
photo 全国の原発の稼働状況

 原発の稼働を巡っては国民民主党の玉木雄一郎党首が、参院選前から自身のTwitterアカウントで「経済安全保障の観点から安全基準を満たした原発は動かすべき。『電力難民』が生じているような国に企業は立地しないし、賃金も上がらない」などと主張し、Twitter上で「全くその通り」などと支持を集めていた。

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