「無限列車は鬼滅だけど、霧幻鉄道は不滅です」 映画監督と主演に聞く(後編)杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)

» 2022年07月17日 08時05分 公開
[杉山淳一ITmedia]

台湾で展示会とコンテスト、10日間で1万3900人の集客

――私は映画が先行公開された直後、2月24日に福島で拝見してるんです。翌日は只見線に乗りました。大雪で被災区間以外も不通だったけど、2月25日は奇跡的に全線開通したんです。その次の日からまた雪崩の危険があるからって止まっちゃったという、奇跡みたいな日で。

 福島の映画館で拝見して、星さんの写真が動いてるなと思って、次の日に只見線に乗ったら、映画の中を旅しているような気分になりました。でも、映画はドキュメンタリー作品でした。旅館の方の本音で「100億円もつぎ込むんだったら、ほかに使った方が街のためには良いんじゃないか」という話が出てきて、やっぱりそういう風に考えていらっしゃる方もいらしたんだなと。

 僕が以前、金山町に電話取材したときに「なんでそんなに鉄道にこだわるんですか、バスでもいいじゃないですか」って言ったら、「道路は冬季封鎖になってしまうし、只見線はトンネルがあるぶん開通しやすい」と。なるほどそういうことなのかと。実用面でも大事な路線だって認識しました。でも今回の映画を拝見して、観光的なインバウンドの要素を知ってびっくりしました。

星賢孝氏(以下、星): 観光がメインですよこれからは。

――コロナ禍の前に、台湾からのお客さんがたくさんいらしてましたね。映画では台湾の展示会とコンテストも紹介していました。10日間で1万3900人の集客でした。この始まりも、星さんが撮った写真をネットにアップしたんですか。主にInstagram?

星: Instagramやブログで発信してたんだけど、それだけじゃだめだと。こちらから出向いていって、こちらの良さをPRしていく必要もあるだろういうことで、最初は上海に行ったんです。上海で3年ぐらい、PRをやったんだけど結果が出ませんでした。

 それなら台湾。台湾の人たちは日本に対して友好的だし。17年から3年やったんです。タイやモンゴルも行きました。講演や写真展もやって。その結果が出て、人がどんどん来るようになってきました。

 そうなると今度は、只見線沿線地域の人も只見線の価値が分かるようになってきたんです。絶景の素晴らしさを目の前にした。ここは素晴らしいって気がついたんです。

撮影は手持ち。機動力重視で三脚は使わない(『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』より)

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