――星さんは只見線には乗らないですよね。今回は写真撮影がテーマの映画ですけれどもやっぱりこの映画を見た人に、僕は乗りに来てもらいたいと思うんですよ。鉄道としても乗ってくれないと残れないでしょうし。
星: そこも皆さんに理解していただきたいんだけど、2両から3両の列車を満員にして6本走らせたところで、絶対に赤字は解消できない。とんでもない赤字はこれからも続きます。ましてや只見線の場合は、写真を見てインバウンドの人がいっぱい来たって、基本的に彼らはオレと一緒で、列車には乗らない。JRの売り上げにはなりません。
じゃ、何で只見線を復活させるのか。お客さんたちは列車には乗らないけれども、地元に2泊も3泊もしてくれて、お土産を買ったり、お酒を飲んだり、ご飯を食べたりしてくれる。実は列車の運賃の何十倍も地元で使っている。そこを理解しないと只見線の評価を誤ってしまう。つまり只見線は赤字でもいいと。その代わり観光客が会津全域の経済を潤してくれる。
観光客が撮影スポットに訪れる 『霧幻鉄道 只見線を300日撮る男』より
そしてもう1つ。只見線の効果は全国に波及してるってことも理解してほしい。台湾から4回も5回も奥会津に来る人たちは、台北から会津にまっすぐ来るわけじゃない。北海道、東北、九州、沖縄、東京なんかに1回は立ち寄って遊んでくる。そういう行動パターンで日本に来てるから日本全国に経済波及効果を及ぼしている。その中心が只見線だ。そこまで考えた上で只見線を評価してほしい。
インバウンド客の彼らがすごいのは、奥会津で撮った絶景を全国、いや世界中にSNSで発信してくれること。只見線がすごいと言ってくれている。無料の広告塔になってくれる。その経済波及効果には、ものすごいものがあるでしょう。それを評価した上で只見線の赤字問題を考えてもらいたい。
――ローカル線に関して費用便益比っていう考え方はないんですよね。新幹線の場合はこれだけ投資すれば地域にこれだけ地域全体にこれだけ利益がありますよって議論がある。ローカル線に関してはそれがないから、どれだけ効果があるから残すって議論になってないんです。
1年間平均で1日1キロメートル当たり2000人乗ってるか乗ってないかの数字で足切りしようとする。朝の会津若松から会津坂下の通学で、すごい人数が乗ってますよね。でも只見線は1日1キロメートル当たり2000人以下。代わりがバスにできるかというとできない。
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