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パワハラを根絶するために知るべき“5つのポイント”働き方の「今」を知る(3/8 ページ)

» 2022年07月18日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

(1)組織トップから明確なメッセージを発信する

 まずは組織方針を明確にすることが必要だ。具体的には、「パワハラは許されないことであり、組織として全従業員が取り組むべき重要な課題である」旨を組織トップから直接発信することが有効だ。

 パワハラ対策のみならず、「守りを固める」方向の取り組みは、現場の協力や一定割合の負担が必要なケースもあり、往々にして面倒がられ、協力を得にくいことが多い。しかし、トップがコミットメントする姿勢を示し、会社ぐるみで取り組むと決めれば、そこに大義名分が生まれるし、具体的なアクションも起こしやすくなる。具体的には、次のような趣旨のメッセージが効果的だろう。

  • ハラスメントは人権問題であり、メンバーの尊厳を傷つけ職場環境の悪化を招く、容赦できない行為である
  • 当社では一切のハラスメント行為を見過ごさず、全てのメンバーが互いに尊重し合える、安全で快適な職場環境を実現する
  • そのため、全てのメンバーは研修を受講し、ハラスメントにまつわる意識と知識の向上を求める。ハラスメント行為を発生させない、許さない組織にしよう
  • ハラスメント被害に遭ったらすぐに相談すること。相談者のプライバシーは守り、決して不利益な扱いはしないと約束する

 組織としての方針が明確に定まれば、メンバーも問題点の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取り組みの効果がより期待できる。

組織トップから直接、明確なメッセージを伝えることが重要だ(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

(2)ルールを決め、周知する

 次に定めるのは、パワハラ防止に関する組織内ルールだ。何がパワハラに該当し、パワハラをやってしまうとどんな罰や処分を受けることになるのか、メンバーにとって分かりやすく明文化していく。パワハラ加害者には往々にして自覚がない。だからこそルールを定め、「それはパワハラですよ」という目線合わせ、判断基準を統一しておく必要があるのだ。

 例えば、見通しのよい通学路を猛スピードで通り抜けていく車があるとする。道路に速度制限がない限り、その車を取り締まることはできないし、運転手に注意したところで「見通しがいいんだから問題ないだろう?」などと言い返されてしまうだろう。しかし、その道路に時速30キロの速度制限がついていれば、時速40キロで走る車はルール違反として取り締まることができる。「ルールを決める」とはそういうことだ。

 パワハラの定義自体は厚生労働省のものを用いるとして、パワハラ防止規定と罰則を設け、罰則の適用条件や処分内容、相談者への不利益取り扱いの禁止などを具体的かつ明確に定める。就業規則にルールを盛り込むとともに、この機に懲戒規定を見直すのもよいだろう。

 その際は、労働組合や労働者の代表などの意見を聞いたうえで進めることも必要だ。職場のパワハラ防止について「労使協定」を締結し、労使で協力して取り組むのもよい。なお就業規則を変更した場合は、その内容の周知が義務付けられているので、忘れず実施しよう。

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