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パワハラを根絶するために知るべき“5つのポイント”働き方の「今」を知る(7/8 ページ)

» 2022年07月18日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

4.それでもパワハラが起きてしまったら

 ここまでの対策を施したにもかかわらず、不幸にもパワハラが発生してしまった場合、組織としてはどのように対処すればよいのだろうか。

それでもパワハラが起きてしまったら……(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 まず、被害が顕在化してから対処が後手に回ることのないよう、できる限り初期段階でトラブルの芽をつめるようにしておきたい。そのために有効なのが「相談窓口の設置」だ。

 人事労務や法務部門、もしくはコンプライアンス担当部門の管理職や社内労働組合のトップを相談員として選任し、対応してもらえればすぐにでも設置できるが、相談員がパワハラ加害者となるケースや、加害者が相談員と個人的に密接な関係があるなど、被害者が相談しにくいと感じることもある。その場合は、産業医や顧問弁護士、顧問社労士に相談業務を委嘱したり、相談窓口対応を代行してくれる専門サービス会社など、外部リソースを活用したりなども検討するとよいだろう。

 いずれにせよ、相談担当者はハラスメントや人権について十分な理解を持ち、中立的な立場で相談対応ができ、解決に向けて取り組める人物である必要がある。セクハラ対応が必要となるケースも鑑み、男女含めた複数の担当者を選任することができれば望ましい。企業規模の問題で、複数担当者が選任できない場合は、最初から外部機関との連携体制を整備しておくことだ。

 相談は対面のみならず、電話やメール、オンラインなど多様な形で受け付け、相談内容について機密が守られることを約束しておく。ヒアリングを丁寧に行い、相談者の了解を得た上で、加害者やハラスメントの様子を見聞きした第三者に事実確認を実施する。事実確認の結果と物証、パワハラ類型、内部のハラスメント防止規定を基に、「パワハラと認定できるか否か」「認定できなかったとしても、何らかの対処が必要か否か」と判断し、対策を検討していく。

トラブルの芽をつむための相談窓口(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 このとき、どうしても「パワハラに該当するか否か」のみがクローズアップされがちだが、真に注目すべきは「加害者側の言動や考え、信念にどのような問題があったのか」、同様に「被害者側の行動や言動にも、加害行為を誘発させるような原因がなかったか」、そして「それぞれはどのように行動、発言すべきであったか」、といった原因究明であり、加害者(必要に応じて被害者側にも)に改善を促すことで、事態が悪化する前に解決につながることが期待できる。

 その後の対応としては、「加害者への注意・指導」「加害者から被害者への謝罪」「人事異動」「懲戒処分」などが考えられる。さらにその懲戒処分についても、軽いものから順に「注意」(訓戒・戒告・けん責)、「減給」「出勤停止」「休職」「降格」「諭旨退職」「懲戒解雇」といったものがある。これらは就業規則に基づき、事業主が従業員の秩序違反行為に対して課す制裁であり、問題行動への直接的な処分であると同時に、従業員全員に対し、当該問題行動が好ましくない行為であることを明確に示し、企業秩序を維持する目的もある。

 相談内容やその後の対処については、個別に相談記録票をつけて保存しておくとよい。懲戒処分をする際の根拠となるし、万一その後訴訟などに発展した際の証拠資料にもなるためだ。なお、対処内容の軽重について判断に迷った場合は、顧問弁護士や顧問社労士、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署などに相談するとよいだろう。

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