クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日本のクラウンから世界のクラウンに その戦略を解剖する(2)池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/7 ページ)

» 2022年07月19日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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4モデルのパワートレインは?

 そう思って見直すと、クラウン・クロスオーバーはセダンの新解釈、クラウン・セダンは保守的なセダンだ。現代においてセダン的に受け取られているSUVにはクラウン・スポーツをぶつけて、さらに隣接ジャンルのワゴンで念を入れる。

 そしてこれらに多彩なパワートレインを組み合わせる。それは地域によっての嗜好とエネルギー事情に即した製品を全域でカバーするためだ。

 おそらくグローバルカーとしてのクラウンが狙うマーケットは、日米中豪、それにASEAN辺りだろう。欧州はどうするのかちょっと見えてこない。

 その前に4モデルのパワートレインはどうなるのだろうか? クラウン・クロスオーバーは2種類のハイブリッドを基本に置きながら、おそらくはPHEVとBEVのバリエーションを追加していくだろう。これはおそらく全地域で戦う主力モデルである。

クラウンクロスオーバーのパワートレインと価格

 クラウン・セダンはおそらくFCVオンリーだと思う。エンジンコンパートメントも燃料タンクも特異なので、あれにバリエーションの追加は難しい。メインマーケットは水素政策に力を入れている中国、次いで日本。場合によっては北米や欧州もあるかもしれない。

 クラウン・スポーツは恐らくハイブリッドだが、クロスオーバーのように2種類のパワートレインが用意されるかどうかは分からない。PHEVとBEVは検討しているだろうと思う。こちらは前席優先のスポーツSUVというコンセプトからして普通に考えればメインターゲットは北米である。そこはマスト。だが余力があれば日本や中国でも売りたいクルマだろう。

 いろんなことが見えてこないのがエステートで、これはおそらく基本はクロスオーバーと同等の構成になるのではないか? エリアはどうなのかといえば、これが一番読めない。本来ステーションワゴンの母国は北米なのだが、いまそこにマーケットがあるかというと少し疑わしい。ただ、アウトドアやスポーツギアの運搬車としてのライフスタイルワゴンは常に一定の需要があるともいえる。

 さて、今回は物量作戦で臨むクラウンのグローバル政策について考察してきた。次回は、なぜトヨタはこれほどまでにクラウンにこだわるのかから始めていくつもりである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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