戦略上の勝算と成り得るポイントは2つだ。これまで縷々(るる)述べて来た通り、国内インフラ前提のボディサイズの縛りを撤廃した。当然国内ユーザーからは激しい抵抗もあるだろう。それが予想されたからこそ長年の縛りに甘んじてきたのだ。
が、しかし、この縛りを棄てることでのメリットもまた大きい。そこに「もっといいクルマ」戦略で熟成させてきたTNGAが組み合わさる。メリットを挙げてみれば以下の通りである。
- 室内寸法が広がる
- トレッドの拡大によって、運動性能が向上する
- サイズの拡大で増えたリソースの一部をデザインに回せば、よりデザインの自由度が高まる
平たくいえば、大型化の不便と引き替えにクルマの性能はあらゆる面で向上する。入れない停められないケースでは万事休すだが、一方でそういう制約が無い場面のみを見れば、クルマのトータル商品力が大きく向上するのだ。
もうひとつは、67年もの長きに渡って溜め込んできたセダン作りのノウハウである。いやこれはむしろクラウンだけの話ではなく、トヨタのクルマ作りノウハウの集大成といったほうがいいのかもしれない。
日本国内で培って来た戦略を世界で試してみる。それが本当に通用するかどうかは、これもやってみるまで分からないが、試してみる価値はあるだろう。
新型クラウンのセダンモデル
新型クラウンのセダンモデル
- セダンの再発明に挑むクラウン(1)
クルマの業界ではいま、クラウンの話題で持ちきりである。何でこんなにクラウンが注目されているのかだ。やっぱり一番デカいのは「ついにクラウンがセダンを止める」という点だろう。
- なぜ、そうまでしてクラウンを残したいのか?(3)
それほどの大仕掛けをしてまで、果たしてクラウンを残す意味があるのかと思う人もいるだろう。今回のクロスオーバーを否定的に捉える人の中には、「伝統的なセダン、クラウンらしいクラウンが売れないのなら、潔く打ち切ればいい。クラウンとは思えないクルマに無理矢理クラウンを名乗らせて延命する意味はない」という声も少なからずあった。
- SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
- 見違えるほどのクラウン、吠える豊田章男自工会会長
2018年の「週刊モータージャーナル」の記事本数は62本。アクセスランキングトップ10になったのは何か? さらにトップ3を抜粋して解説を加える。
- え!? これクラウンだよな?
トヨタのクラウンが劇的な進化を遂げた。今まで「国産車は走りの面でレベルが低い」とBMWを買っていた人にとっては、コストパフォーマンスがはるかに高いスポーツセダンの選択肢になる可能性が十分にあるのだ。
- プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える
すでに昨年のことになるが、レクサスの新型NXに試乗してきた。レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。そもそもプレミアムとは何か? 非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。
- トヨタはプレミアムビジネスというものが全く分かっていない(後編)
前回はGRMNヤリスがどうスゴいのかと、叩き売り同然のバーゲンプライスであることを書いた。そして「販売のトヨタ」ともあろうものが、売る方において全く無策ではないか? ということもだ。ということで、後半ではトヨタはGRMNヤリスをどう売るべきだったのかを書いていきたい。
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