クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日本のクラウンから世界のクラウンに その戦略を解剖する(2)池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/7 ページ)

» 2022年07月19日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

後出しから絨毯(じゅうたん)爆撃へ

 さて、閑話休題。要するに今のセダンリーグでは、誰も成功者がいない。トヨタとしては得意の後出しじゃんけんができない。そういう時トヨタはどうするのか? そういう局面でトヨタがやるのは絨毯爆撃作戦である。

 かつてミニバンブームの時、トヨタはミニバンとそれに隣接するSUV、ワゴンモデルを、背丈の高さとシート数の2軸マトリックスにしてマス目を全部埋めてきた。2000年から05年の期間で区切って、ラインアップされていたクルマを数え上げると、その総力戦の凄まじさが分かる。

 エスティマ(1990〜2000)、イプサム(1996〜2001)、マークIIクオリス(1997〜2002)ナディア(1998〜2003)、クルーガーV(2000〜2007)ノア/ボクシイ(2001〜2007)、マークIIブリット(2002〜2007)、アルファード/ヴェルファイア(2002〜2008)、シエンタ(2003〜2015)、ウイッシュ(2003〜2017)、アイシス(2004〜2017)。

 正直なところ個別のクルマはもうよく分からない。抜けているモデルもあるかもしれないし、初代以外はここから省いているので、それも加えればもう数台多くなる。何が言いたいかといえば、ありとあらゆるものを並べて、お客に選ばせ、売れないものはとっとと引っ込めるというのが戦略だ。

 では全部がやってみなけりゃ分からない式の無手勝流かといえば、そこまで乱暴ではなく、ステップワゴン対抗、ストリーム対抗、オデッセイ対抗、エルグランド対抗と戦略的に切るべきカードは切っている。

 今回のクラウン4モデルはこの時を彷彿(ほうふつ)とさせる。ミニバンとそこに隣接するジャンルに全部コマを置いてマジノ戦のような戦いをしたのと同様に、セダンとそれに隣接するSUVやワゴン(エステート)をズラリと並べる戦略だと筆者は受け取っている。

新型クラウンのスポーツモデル
新型クラウンのスポーツモデル

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