さて、閑話休題。要するに今のセダンリーグでは、誰も成功者がいない。トヨタとしては得意の後出しじゃんけんができない。そういう時トヨタはどうするのか? そういう局面でトヨタがやるのは絨毯爆撃作戦である。
かつてミニバンブームの時、トヨタはミニバンとそれに隣接するSUV、ワゴンモデルを、背丈の高さとシート数の2軸マトリックスにしてマス目を全部埋めてきた。2000年から05年の期間で区切って、ラインアップされていたクルマを数え上げると、その総力戦の凄まじさが分かる。
エスティマ(1990〜2000)、イプサム(1996〜2001)、マークIIクオリス(1997〜2002)ナディア(1998〜2003)、クルーガーV(2000〜2007)ノア/ボクシイ(2001〜2007)、マークIIブリット(2002〜2007)、アルファード/ヴェルファイア(2002〜2008)、シエンタ(2003〜2015)、ウイッシュ(2003〜2017)、アイシス(2004〜2017)。
正直なところ個別のクルマはもうよく分からない。抜けているモデルもあるかもしれないし、初代以外はここから省いているので、それも加えればもう数台多くなる。何が言いたいかといえば、ありとあらゆるものを並べて、お客に選ばせ、売れないものはとっとと引っ込めるというのが戦略だ。
では全部がやってみなけりゃ分からない式の無手勝流かといえば、そこまで乱暴ではなく、ステップワゴン対抗、ストリーム対抗、オデッセイ対抗、エルグランド対抗と戦略的に切るべきカードは切っている。
今回のクラウン4モデルはこの時を彷彿(ほうふつ)とさせる。ミニバンとそこに隣接するジャンルに全部コマを置いてマジノ戦のような戦いをしたのと同様に、セダンとそれに隣接するSUVやワゴン(エステート)をズラリと並べる戦略だと筆者は受け取っている。
新型クラウンのスポーツモデル
新型クラウンのスポーツモデル
- セダンの再発明に挑むクラウン(1)
クルマの業界ではいま、クラウンの話題で持ちきりである。何でこんなにクラウンが注目されているのかだ。やっぱり一番デカいのは「ついにクラウンがセダンを止める」という点だろう。
- なぜ、そうまでしてクラウンを残したいのか?(3)
それほどの大仕掛けをしてまで、果たしてクラウンを残す意味があるのかと思う人もいるだろう。今回のクロスオーバーを否定的に捉える人の中には、「伝統的なセダン、クラウンらしいクラウンが売れないのなら、潔く打ち切ればいい。クラウンとは思えないクルマに無理矢理クラウンを名乗らせて延命する意味はない」という声も少なからずあった。
- SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
- 見違えるほどのクラウン、吠える豊田章男自工会会長
2018年の「週刊モータージャーナル」の記事本数は62本。アクセスランキングトップ10になったのは何か? さらにトップ3を抜粋して解説を加える。
- え!? これクラウンだよな?
トヨタのクラウンが劇的な進化を遂げた。今まで「国産車は走りの面でレベルが低い」とBMWを買っていた人にとっては、コストパフォーマンスがはるかに高いスポーツセダンの選択肢になる可能性が十分にあるのだ。
- プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える
すでに昨年のことになるが、レクサスの新型NXに試乗してきた。レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。そもそもプレミアムとは何か? 非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。
- トヨタはプレミアムビジネスというものが全く分かっていない(後編)
前回はGRMNヤリスがどうスゴいのかと、叩き売り同然のバーゲンプライスであることを書いた。そして「販売のトヨタ」ともあろうものが、売る方において全く無策ではないか? ということもだ。ということで、後半ではトヨタはGRMNヤリスをどう売るべきだったのかを書いていきたい。
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