キリンビールが販売する国産ウイスキーの販売が好調だ。7月20日までの同社の発表によると、2022年上半期(1月〜6月)の累計販売数が前年比140%増加したという。同社は好調の要因を、製造拠点での設備増強や、SNSを活用したプロモーション戦略が功を奏したためとしている。
売り上げが好調なのは、 「キリンウイスキー 陸」(陸)と「キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士」(富士)。このうち、20年5月発売の陸は、「味わい」「香りの良さ」「本格感」について高い評価を獲得。購入者からは「甘みを感じておいしい」「ウイスキーの香りがしっかり感じられる」「幸せな気分になる商品」などといった声が出ていた。
ただ、他社製品と比較した場合、ウイスキーとしては後発だったことから発売後の認知率は2割にとどまっていた(同社調べ)。このため、同社は4月に陸のパッケージデザインを刷新。より親しみやすいデザインとした。
原酒本来の味わいを損なわないよう冷却ろ過をしない「ノンチルフィルタード製法」を採用し、味覚をブラッシュアップするとともに、同社は自社の国産ウイスキーとしては17年ぶりのTVCMやSNSを使った情報発信、飲みきりサイズのパウチを使った大規模な試飲体験など、ウイスキーカテゴリーとして同社史上最大規模となるプロモーションも実施した。
その結果、4月のリニューアル以降、6月までの累計販売数量が前年比約3倍に。上半期累計販売数量でも同216%と市場平均を大きく上回った。同社は陸のリニューアルについて「これまでウイスキーに興味がなかったお客さまに対して、ウイスキーという新たな選択肢の提案につながった」としている。
25年までに販売金額で「富士」ブランドの海外比率50%を目指している同社。目標達成のため、海外での販路拡大に取り組んでいる。取り組みの一環として、3月から豪州、6月から中国への輸出をそれぞれ開始。これまで販売していた米国では、8州(3月時点)から14州(7月時点)に販路を広げた。
こうしたことから、上半期の販売数は海外で前年比20倍以上、輸出金額ベースでは同約6割増を記録。日本国内でも同約3倍以上の販売数を記録した。
日本産ウイスキーを巡っては、世界的な人気の高まりで原酒不足が課題となっている。同社は富士御殿場蒸溜所に約80億円を投資し、生産設備を増強。熟成庫のリニューアル・大型化などで保管能力を約2割増強した他、発酵・蒸留設備として小型発酵タンク4基、蒸留器2系列を新たに導入した。こうした取り組みも好調の要因となっている。
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