とはいえ、冷やすごみ箱には先例がないため、まだ市場が形成されていない。また法人向けのベアリングリテーナーを主力商品とするNKCは、コンシューマー向けの販路も持っていない。「冷凍回路を設計できるスタッフもいなかった。開発当初は逆風ばかりだった」と長崎氏は話す。
コンシューマー向けの製品を作っている家電メーカーの場合、新製品の開発に際しては機能や本体サイズなどの条件を設定した要求仕様書を用意し、その条件を満たす設計を進めていくところだ。ところがCLEAN BOXの要求仕様書は空欄だらけ。
「全く類例がない商品なので、そもそも要求仕様を決めようがなく、書けないことがとても多かった。モニターの声を聞きながら試作を繰り返した」と長崎氏は苦笑いするが、逆にCLEAN BOXは普通の家電メーカーでは作れない製品だとも言う。
「読めないマーケットに対する開発コストの問題、クレームのリスク、保守・メンテナンスの対応などを考えると、大手家電メーカーでは稟議書の段階で通らない可能性が高い」(長崎氏)
CLEAN BOXの販路には、生活提案型商業施設の「蔦屋家電+」(東京都世田谷区)を選んだ。長崎氏は「市場を形成するには、冷やすごみ箱のある生活を知ってもらう必要がある。その点で家電のあるライフスタイルを提案・発信しているプラットフォームである蔦屋家電+が最適だった」と話す。
開発に先駆けてクラウドファウンディング「GREEN FUNDING」で支援を呼びかけた。支援額は開始24時間で1000万円を超え、クラウドファウンディングが終了した4月末時点では992人から目標額の80倍超える4007万750円の支援を集めることに成功した。
支援者からは「生ごみやペットごみは、狭い家では大問題なんです!」「子どものおむつと生ごみの処理に苦労しているので届くのが待ち遠しい」「ペットのトイレシートの臭いが気になっていた。消臭効果のある価格が高めのシートを利用しても、ごみの収集日までには臭ってしまう」といった声が寄せられている。
このほど発売した2代目CLEAN BOXの開発に当たっては、初代を購入した100人に電話で使用感を聞き、改善すべき点を洗い出したという。
新製品では「もう少し大きいサイズが欲しい」との声を受けて容量を17リットルから20リットルに増やしたほか、冷却性能もマイナス10度からマイナス11度にアップ。さらにファンレス設計にすることで静音性も大幅に向上した。
「初代の発売から2年になるが、利用している方から『なくなったら困る』と言われて、CLEAN BOXが頼りにされていることを実感した」と長崎氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング