ここで一つ疑問が湧く。B2Bの事業を展開しているNKCが、なぜ、そこまでして家電を作る必要があったのか。
長崎氏は、NKCが現在の業態になるまでの経緯を振り返って説明する。
「創業者で初代社長である中西辰次郎は、薄い金属を精密に加工する京都のかんざし職人だった。当時、京都に1台だけあったT型フォード車の修理を頼まれたことがきっかけで、同じく薄い金属を精密に加工したベアリングリテーナーと出会い、『これからはクルマの時代になる』とベアリングリテーナーを製造するようになった」
つまり、次の時代の産業、ステータス、インフラがどうなるのかを観測・察知して先回りし、時代に乗って登場する製品が安定稼働するための根幹となる部分をサポートするのがNKCの各事業に共通する考え方だと長崎氏は言う。
「(長崎氏が所属する)ビジネスデザインセンターは、次世代のインフラなどがどうなるかをリサーチする部署。ただし調査したら終わりというわけではなく、そこから市場を形成し、定量的な売り上げを実現して、リサーチが正しかったことを証明するところまでの役割を担っている」
長崎氏によれば、CLEAN BOXが隠れたニーズを掘り起こしたことで、国内外でも類似製品が登場し始めている。ごみに特化しているもの以外も含め、2台目の冷凍庫を持つ「セカンド冷凍庫」の需要が増えていて、市場が形成されつつあるとのことだ。
新型コロナウイルス感染症拡大による引きこもり需要で、小型冷蔵庫の売れ行きが好調というデータもある。
そうしたライバル製品の存在も気になるところだが、長崎氏は「本来、NKCはパーツを作っている会社なので(パーツを買ってくれる)他社製品も大歓迎。むしろ、競合製品の出現が市場形成を加速してくれるので助かると考えている」と、余裕の表情だ。
CLEAN BOXの今後について、長崎氏は「他社製品も含めて、どこまで市場を形成できるかが課題。現状は夏用の季節家電という位置付けだが、冬場に暖房を使うことを考えると通年家電ともいえる。将来的には冷凍ごみ箱も生活インフラの一つになっていく」と話す。
法人向けの製品を作ってきた企業から生まれ、一般家庭向けの製品としてヒットしたCLEAN BOX。「冷凍ごみ箱に限らず、今後も生活の裏側にあるニーズを掘り起こし、人々の生活を支えるインフラを支える製品を作っていきたい」と長崎氏は意気込みを語った。
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