闇で流れる「ウナギロンダリング」 土用の丑の日に未来はあるか「土用の丑の日」に憂う(1/6 ページ)

» 2022年07月22日 10時59分 公開
[真田康弘ITmedia]

 7月23日に、今年も土用の丑の日がやってくる――。

 7月9日付の日本経済新聞によると、今年の国産物の価格は生きたウナギが前年同期比で4割、蒲焼は1割弱高い。水産庁の発表によると、2022年漁期(2021年11月〜22年5月)の稚ウナギ(シラスウナギ)池入れ数量は、前年の18.3トンを11%下回る16.2トンに終わった。

7月23日に、今年も土用の丑の日がやってくる

 各都府県により異なるものの、稚ウナギの漁期はおおむね前年12月から4月までで、水揚げが例年よりも遅れたことが理由の一つだとされる。稚ウナギの平均価格も前年のキロ当たり132万円から220万円へと大幅に値上がりしている。

 ウナギの水揚量の減少は今に始まったことではない。図1からも明らかなように、1963年に232トンを記録していた稚ウナギの採捕量は、2022年には10.3トンにまで落ち込んだ。最盛期のわずか4.4%に落ち込んだ。1961年に3387トンもあった天然ウナギの漁獲量は2021年には63トンにすぎない。スーパーに出回るウナギは、ほぼほぼ全てが養殖もの。その価格も“うなぎのぼり”である。

【図1】日本国内のウナギ漁獲量

改善進まぬ「ウナギロンダリング」

 現在、日本のウナギ養殖は国内で採捕された稚ウナギだけでは養殖池を埋められない状況で、外国からの輸入に頼っている。かつて最大の輸入先だった台湾が輸出を原則として禁止した07年以降、香港からの輸入が急増、現在に至っている。台湾から香港へといったん密輸されたものが、香港を通じて日本に流入している「ウナギロンダリング」が行われているのである。このことは業界関係者なら誰もが知る事実だ。

 国内でも多数の稚ウナギの採捕が「密漁・無報告」のものであることも関係者周知の問題である。例えば22年漁期の国内採捕量は10.3トンと推定されるところ、報告された採捕量は5.3トンにすぎない。約半分の5トンの稚ウナギが密漁・無報告で採捕されたと考えられる。

 図2は22年漁期の稚ウナギの国内採捕量、香港以外からの輸入量、国内での無報告採捕量、及び台湾からの密輸由来の疑いが高い香港からの輸入量を示したものだ(なお輸入量は前年7月から今年5月まで)。密輸・密漁・無報告由来のものが半数以上を占めているのが分かる。つまり、スーパーに並んでいる国内産の養殖ウナギの実に半分が、由来が怪しい可能性の高い「灰色のウナギ」ということになる。

【図2】2022年漁期国内養殖ウナギの出自(単位:トン)
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