闇で流れる「ウナギロンダリング」 土用の丑の日に未来はあるか「土用の丑の日」に憂う(3/6 ページ)

» 2022年07月22日 10時59分 公開
[真田康弘ITmedia]

漁業者搾取の「稚ウナギ謎ルール」

 国内で無報告の稚ウナギ流通が蔓延(まんえん)する最大の要因ともいえるのが、一部の自治体に存在する「ウナギ謎ルール」の存在だ。ウナギの採捕は各都府県が定める漁業調整規則等の各種ルールにより規制されている。大多数の自治体で稚ウナギは原則採捕が禁じられており、特別に許可を得た場合のみ例外的に採捕が許される仕組みになっている。

 つまり、多くの自治体では稚ウナギの採捕は法律上そもそも「漁業」ではない。また採捕の期間などのルールについても、各都府県により異なっている。

 ここで問題となるのは、一部の県では県内の養鰻業者保護のため、稚ウナギの流通が県内のみに限定されているケースだ。

 例えば高知県では、高知県には「うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針」という県が定めたルールがあり、稚ウナギの採捕者は、県より稚ウナギ採捕許可を得た漁協などの「許可名義人」もしくは「許可名義人」が指定した「指定集荷人」に出荷することが義務付けられており(第12条(3))、「許可名義人」または「指定集荷人」は、集荷した稚ウナギを県内の養鰻業者が設立した「一般社団法人高知県しらすうなぎ流通センター」に出荷しなければならないと定めている(第5条及び第12条(4))。

 「しらすうなぎ流通センター」に集荷された稚ウナギは、原則県内養鰻業者の種苗として供給しなければならない(第12条2、以上は「令和3年度うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針」による) 。

 養鰻場の多い他県にも同様の「謎ルール」がある。例えば宮崎県では「うなぎ稚魚の取扱いに関する条例」により、県内で採捕された稚ウナギの流通が県内の登録養殖業者向けに限定されている。また静岡県では「県内産種苗の取扱方針」という県独自のルールで「種苗は、県内需要を充足することを目的とする」と定めるとともに、「県内産うなぎ種苗に関する取扱要領」で「採捕した種苗の供給先は、採捕区域の養鰻組合を優先するものとする」として稚ウナギの流通を原則県内に限っている。

 下の表は今年度(22年度)の稚ウナギの採捕報告量と養殖池への池入れ実績が多い上位10県についての県内流通規制の有無について調べたものだ。池入れ実績の多い、つまり養鰻業者の数が多い県では軒並み規制されていることが分かる。逆に、採捕量は多いが養鰻場の数が少ない千葉や、そもそも養鰻場のない神奈川には、こうした規制はない

【表】稚ウナギ採捕報告量・池入れ実績上位10県での県内流通規制の有無

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