闇で流れる「ウナギロンダリング」 土用の丑の日に未来はあるか「土用の丑の日」に憂う(2/6 ページ)

» 2022年07月22日 10時59分 公開
[真田康弘ITmedia]

見掛け倒しの「なんちゃって国際規制」

 ニホンウナギは複数の国及び公海にまたがって回遊するため、資源管理には国際的な協力が欠かせない。このため、12年より関係国は「ウナギの国際的な資源保護・管理に係る非公式協議」を毎年開催。14年に日本、中国、台湾、韓国は、ニホンウナギの池入数量を直近(13年)の数量から2割削減し、法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討するという共同声明を発表した。

 以降「2割削減」というのが唯一の国際的な数量規制だ。22年4月には非公式協議の結果を踏まえ、初の科学者間会合が開催されている。

 しかし「2割削減」の基準となっている13年はシラスウナギの池入れ量が他の年に比べて多く、実際のところ、科学的根拠に基づいたものではない。法的拘束力のある枠組みの議論も全く進んでいない現状にある。「非公式協議」にしても「科学者会合」にしても、会議の終了後にプレスリリースなどが発表されるのみで、報道機関など外部には一切非公開となっている。

 国際NGO「世界自然保護連合(IUCN)」でもニホンウナギは絶滅危惧種に指定されていて、同様に絶滅危惧種に指定されたヨーロッパウナギは既にワシントン条約を通じて国際取引が規制されている。同条約ではニホンウナギなどヨーロッパウナギ以外のウナギについても、生息国は共通の管理目標の設定や資源状況のモニタリングの導入、貿易時のトレーサビリティーの改善等が勧告されている。

 ニホンウナギについてもいつかはワシントン条約による国際規制の網がかかるのではないかと業界関係者は危惧しているが、「非公式協議」や「科学者会合」の開催は、「私たちはちゃんと関係国で規制に取り組んでいます」とのアリバイを残すためだけの「見せかけだけの取り組み」あるいは「なんちゃって国際規制」であるとの誹(そし)りは免れない。

2019年の8月にジュネーブで開催された第18回ワシントン条約締約国会議の模様(筆者撮影)

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