苦しいといわれる第二地銀の実態は? 福島銀行の業績ポイント妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(8/9 ページ)

» 2022年07月27日 07時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

住宅ローン貸し出しも増加だが競合も

 さらに、これもまた千葉銀行同様に住宅ローンに関しても大きく伸びています。コロナ禍で在宅時間が増加し住環境への投資が進みましたから、そういった中で住宅ローンも伸びていたことが考えられます。

 ちなみに住宅ローンはコロナ以前の19年3月期から安定して伸びています。低金利が続く中で住宅ローンを組む人が増えているということでしょう。

 実際に統計データを見てみても、国内で30歳代での住宅ローンの残高は増加していますから、市場環境自体が悪くはないことも好影響を与えているでしょう。

 貸し出しの平均約定金利の19年3月期からの推移を見ると、住宅ローン金利は1.14%→1.07%→1.01%→0.96%と悪化傾向となる一方で、事業性の貸し出しに関しては1.47%→1.52%→1.52%→1.53%とわずかではありますが伸びています。

 事業性の貸し出しに関しては、競合の少ない地元の中小企業向けが大半ですし、利子補給型の貸し出しが増えていますので、そういった中でそれなりに高い金利を提示することはできていたのかもしれません。

 一方で住宅ローンに関しては今はネットバンクなどが積極的に全国展開していますから、全国の競合と争う必要があり低金利化が進んでいくことが考えられます。この傾向は今後も変わらないでしょうから、市場金利の上昇以上に住宅ローン金利を上昇させるというのは難しい状況が続くでしょう。

 となると人口減少や競合環境の悪化が進む中で、今後も住宅ローンからの利益を伸ばしていくのは容易な状況ではないでしょう。

 また、貸出金額自体が増加した結果、貸出金利息も増加していてコロナ前の19年3月期の6056億円→6732億円へと増加し、投資信託の解約益を除く本業収益も、4年連続で増加したとしていて好調です。

 千葉銀行のような地域経済が成長している大手の銀行だけでなく、福島銀行のような第二地銀であっても、コロナの影響はポジティブに働いていたということですね。

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