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ノジマやYKKは定年撤廃 シニアの戦力化が企業にもたらす恩恵とは?シニアは本当に扱いにくい?(1/4 ページ)

» 2022年07月28日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 会社が採用する際に「30代まで」など年齢制限を設けることは、労働施策総合推進法によって原則禁止されています。しかしながら、実際の採用現場においては「できるだけ若い方がいい」など、内々に年齢条件を設定しているケースがあります。

 若手層にひも付くのは、「年齢が低いほど自社のカラーに染めやすい」「フットワークが軽い」「仕事や新しい技術の習得が早い」など、会社にとって扱いやすいイメージです。逆にシニア層には、扱いにくいイメージがひも付いてしまっています。

画像はイメージ(ゲッティイメージズ、以下同)

 それらのイメージが勝手な思い込みや偏見であったとしても、長きにわたり多くの会社が、若手に優しくシニアに厳しい姿勢をあからさまにしてきました。45歳など一定の年齢以上で線を引いて早期退職を募集したり、能力に関係なく、一律に役職定年を設けているような会社は少なくありません。

 その一方で、マクロ環境はどんどん変化しています。総務省の労働力調査によると、2021年の就業者のうち70歳以上の数は510万人。11年には285万人だったことを考えると、10年で2倍近く増えたことになります。50年前、1971年の92万人と比較すると5倍を超える数字です。

 労働力調査をもとに、過去50年で年齢層別就業者比率がどのように変わってきたかを10年ごとに比較してみると、以下グラフのようになります。

過去50年の年齢層別就業者比率の推移。15〜29歳の比率が71年から21年で半減している一方、70歳以上の層は約4倍に増加している(総務省の労働力調査より)

 71年に33.2%と最も多かった15〜29歳の比率が、21年には16.5%と半減しました。対照的に、70歳以上の層は1.8%から7.6%へと約4倍に増加しています。これらは、日本に起きている人口動態を如実に表す象徴的な数字です。

 6月24日、時事通信は「4社に1社が導入済み『70歳まで雇用』の努力義務―厚労省集計」と題した記事を報じました。21年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、会社が70歳まで社員の就業機会を確保することが努力義務になったことを受け、実際に措置を講じた会社が25.6%だったとのことです。

 記事では、70歳までの就業機会確保措置が「一定程度実施されている」と評価する厚生労働省のコメントを紹介しています。確かに、65歳までの雇用安定措置については法律上義務化されているものの、70歳までの就業機会確保措置はあくまで努力義務に留まるにも関わらず4分の1強で行われているというのは、それだけシニア層の活躍促進に前向きな会社が存在していることを意味すると言えます。

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