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ノジマやYKKは定年撤廃 シニアの戦力化が企業にもたらす恩恵とは?シニアは本当に扱いにくい?(3/4 ページ)

» 2022年07月28日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 もう1つは、採用対象となる人材の間口を広げることです。他社が上手く戦力化できていない層を取り込むことができれば、人員不足による競争力低下を回避するだけでなく、いざ攻めに転じようとなった時に事業拡大のアクセルを踏むことも可能です。先の選択肢よりは難易度が低く即効性が高いので、大半の会社にとって現実的な選択肢となりやすいのはこちらの方です。

シニア層の就業で生まれる派生効果とは?

 今後も人口比率が増加し続けるシニア層の就業促進は、採用対象の間口を広げる有力な取り組みの一つとなるはずです。また、シニア層の就業促進に取り組むと採用難対策以外にも派生的効果が期待できます。こちらは大きく3点挙げたいと思います。

1.会社も経済も共に潤う循環を生み出すことができる

 これまで見てきたようにシニア層は今後も増えていきます。比率が増え続けるシニア層は、労働力としてはもちろん、消費者としてもボリュームゾーンです。シニア層の消費を喚起するためには、マーケティングにおいてもシニア視点を取り込むことが鍵となります。シニア層が活躍する会社が品物やサービスを提供する一方、シニア層が働いて得た収入が消費へと回る。そんな循環を生み出すことができれば、会社も経済も潤うことになります。

画像はイメージ

2.旧態依然とした人事制度刷新の機会となる

 今も多くの会社に残っている年功賃金の考え方は、社員の能力や成果に対してではなく、勤続年数や年齢に応じて報酬を支払います。そのため、会社が期待する働きと報酬との間にギャップが生じやすく、一定の年齢を超えるとギャップはどんどん広がってしまいます。そんなシステムを年齢が高いシニア層に適用してしまうのは、会社にとってリスクです。

 また、シニア層は必ずしもフルタイム勤務とは限りません。短時間や短日数、あるいはシフト勤務を希望する人もいます。それら柔軟性を持った働き方と脱・年功賃金を同時に成立させるには、いつまでに何をどのレベルで仕上げるか、依頼するタスクや成果を明確にした上で、働きと報酬を合致させる仕組みを構築する必要があります。そうすることで、冒頭で示したような扱いづらさをシニア層に感じてしまっている社員が多い会社であったとしても、一定の納得感にもとづいた社内理解を得た上での戦力化がしやすくなります。

 また、シニア層を皮切りにそんな仕組みを会社全体にも適用できれば、年功賃金で報酬が抑えられていた若手層や優秀な副業人材にとっても活躍しやすい環境が整備されることも期待できます。

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