尋常ならざるSBIのしたたかさを感じさせる点は、SBIのメインバンクがみずほ銀行でありながら、提携相手にSMBCを選んだ点に表れています。もちろんSBIはSMBCとも取引はあるのですが、常識的な銀行取引の判断からすれば、仮にSMBCから資本・業務提携の話が持ち掛けられたとしても、メインバンクであるみずほ銀行に相談し、同行との提携を優先して検討するのではないかと思うのです。
報道によれば、今回の件に関して最初に動き出したのは北尾吉孝SBI社長の方だったというのですから、メインバンクの顔は丸つぶれだと言ってもいいでしょう。
SMBCを選んだ理由は2つ考えられます。1つ目の理由は、みずほの相次ぐシステム障害が社会問題化して、金融庁から業務改善命令を受け、トップの総入れ替えを余儀なくされたという体たらくぶりに、SBIとしては銀行取引はともかくとしても業務提携を結ぶことのリスクを考えたであろうということです。
業務提携となればシステム面での連携は当然の流れです。ネット証券のSBIからすればシステムの安定運用はサービスの命綱でもあるわけで、システム運用面で未だ信頼感を得られないみずほとの提携はおよそ考えられなかったと思われます。
もう1つの理由は、企業風土の問題です。資本・業務提携は、単なる業務提携とは比較にならないほど両者が踏み込んだ提携関係になるものです。しかも今回SBIが求めたものは、SMBCが同社の筆頭株主になるというこの上ない太い関係づくりであり、企業風土的なものが合うか否かも提携に向けた大きな判断材料となるわけなのです。
SBIは創業以来、北尾氏のワンマン経営であり、北尾氏は抜群の営業力で業界トップに君臨する野村證券の出身。北尾氏のこれまで各方面での強引ともいえるやり口は、まさに「営業の野村」を彷彿とさせるものです。
SMBCはその名の通り、旧財閥系の三井銀行と住友銀行の2行が合併して誕生したメガバンクですが、今や経営の主導権は完全に住友にあり、組織風土も住友のそれに染まっています。住友は昔から「セブンイレブン・バンク」(行員が朝7時から夜11時まで働く銀行)と揶揄(やゆ)されるほど、銀行らしいスマートさとはかけ離れたモーレツ営業で知られた銀行です。
北尾氏がSMBC太田純社長を称して「ケミカルが合う」と語っていたことは、「営業の野村」と「営業の住友」という共通の組織風土を象徴していました。三行合併のマイナス効果ばかりが目立つみずほは、この点からもおよそ候補にならず「蚊帳(かや)の外」に置かれたものと思われるのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング