決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、4回連続で地方銀行の決算を取り上げていきます。
今回取り上げるのはスルガ銀行です。
かつてはその収益性の高さから「地銀の優等生」と評された企業です。
立地的には「静岡銀行」と「横浜銀行」という、国内では3大地銀と呼ばれる大手行に挟まれる中で、利回りの高い個人向けの融資に活路を見出すことで、高収益の企業となっていました。
例えば2017年3月期の平均貸出金利は3%台と、他の地方銀行が1%台の中で圧倒的な水準です。
直近の22年3月の段階でも、貸し出しに占める個人ローンの比率は86%となっています。ほかの多くの銀行が5割以下なのに対して、非常に高い比率です。
さらに他行の場合は個人ローンの大半は住宅ローンです。住宅ローンでは競争も激化し低金利化が進んでいますから利回りの高い商品ではありません。スルガ銀行の場合は、直近の22年3月期で個人ローンに占める住宅ローンの比率は24.8%と低水準になっています。
ではどうやってスルガ銀行が高い利回りを実現していたのかというと、不動産投資への融資でした。しかしご存知の通り、18年初頭に「かぼちゃの馬車問題」からはじまるシェアハウス向けの不正融資が発覚します。
スルガ銀行は不動産投資を行う個人に多額の貸出をすることで高い利回りを実現していたわけですが、その中には通常であれば審査が通らない債務者も多くいました。そういった債務者に、融資の審査資料の改ざんを行い、融資を実行することで高い利回りを実現していたわけです。
シェアハウス関連の融資に関しては、代物弁済による返済で債務を帳消しという、これまでにはなかったような調停が認められたことでも大きな話題となりましたよね。
また、不正の背景には過剰なノルマが存在した事もあり、その企業体質にも厳しい目が向けられる中でイメージの悪化も大きなものとなりました。業績が大きく傾く中で19年に家電量販店大手のノジマと資本業務提携を結んだものの、ノジマ側の提案を拒否し続け22年にはその提携も解消となるなど、そういった面からも話題が続いている企業でもあります。
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