シェアハウス不正融資で終わらない、スルガ銀行が抱えるもう1つの爆弾妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/7 ページ)

» 2022年08月03日 07時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

一方、一棟収益ローンに向けた貸倒引当金が多額に

 というのも実は、問題が大きく話題となったのはシェアハウス向けのローンでしたが、不正があったのはシェアハウスだけではなくアパート・マンション向け融資もだったからです。シェアハウス向けの融資の訴訟が決着を迎えたこともあり、21年からスルガ銀行はこのアパート・マンション向けのローンでも提訴されています。

 そしてこのアパート・マンション向けのローンは規模が非常に大きいのです。特に大きいのが、一棟収益ローンというアパートやマンションを一棟まるまる購入するためのローンで、個人向けの貸出金1兆8385億円のうち1兆177億円と55.3%を占めています。

 そしてその一棟収益ローンの状況を見てみると、合計1兆177億円の内正常先としている債権は2399億円しかないことが分かります。8割弱の物件が問題が起きる可能性があると判断しているということです。

 現状は返済に延滞はないが、確定申告書が受理できない、融資先物件のキャッシュフローがマイナスの状況であるということで、要注意先に指定されている物件が5681億円と特に多額です。

 1棟収益ローンの物件の入居率は、21年度時点では87.4%となっています。これだけ入居率があってもキャッシュフローがマイナスになっている顧客が多いわけですから、かなり割高で物件を買いローンを組成していたことが分かります。

 今後の訴訟の結果次第で、シェアハウスと同様に債務免除のようなことが起きれば、その流れに乗る可能性が高い物件は多いと考えられますね。

 ちなみにシェアハウスのローンは、不正融資が発覚する以前の段階で2000億円ほどでした。それに対して一棟収益ローンの残高は1兆円以上、さらに正常先としているのは2399億円しかないことから考えても、不動産投資向けのローンの問題が本格化すると、非常に大規模な損失につながる可能性が高いことが分かります。

 訴訟の状況次第では、さらなる貸倒引当金の積み増しによる損失の増加の可能性がありますので、その点は注意が必要そうです。

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