続いて貸出金の残高を見ていくと、不正融資問題が発覚した18年3月期以降は右肩下がりで減少を続けていて、17年3月期に3兆2537億円あった残高は22年3月期には2兆1385億円となっています。
預金はコロナ禍で一定の回復を見せていましたが、貸出に関しては減少傾向が続いていますね。
19年に調査対象となった投資用不動産融資の状況としては、4割の物件が融資残高がゼロとなり、5割が元本一部カットと対応が進んでいますから、そういった物件の残高減少も影響しているのでしょう。
これまで取り上げてきた地方銀行では、法人へのコロナ支援として、無担保・保証協会付・利子補填のいわゆるゼロゼロ融資の影響もあり、貸出し残高は増加していました。しかし個人ローンが貸出しの86.9%と大半を占めているスルガ銀行においては、その影響も小さかったことが考えられます。
また、減益となった要因を見ていくと貸出金利息減少による影響が大きく、残高減少による影響が51億円あった他にも、利回りの悪化による影響が25億円となっています。
スルガ銀行としても、以前のような「大きなリスクを取って高利回り」という手法から、リスクを抑制しミドルリスク・ミドルリターンの事業モデルへの転換を行う中で新規ローンの実効レートが低下しているとしています。さらに以前に融資を行った高利回り融資も条件変更に伴う貸出金の利回り低下も起きているとしています。
業績・預金残高・貸出・利回りと全て悪化が続いていることが分かります。
とはいえ経常利益ベースで21年3月期は230億円、22年3月期は100億円以上の利益が出てはいます。
問題の発覚したシェアハウス関連の貸し出しについては、19年3月期に損失を出していますが、不正融資問題は18年に発覚してからまだ4年ほどしか経っていません。貸出の多くはそれより長期のものが多いですから、過去の高利回りの貸し出しから一定の利益が出ているということです。
長期的には貸し出し減少、利回り悪化の中で業績悪化が考えられますが、短期的には過去の利回りのいい融資の好影響を一定程度受けられるということですね。
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