関西随一の高級住宅街、兵庫県芦屋市。人口約9万4000人という小都市に、高級スーパーが続々とオープンしている。
直近5年以内にオープンした店を列挙してみよう。
以上、5店が確認できている。しかも、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し始めた20年3月以降に4店が新しくオープンしているのだ。
一番新しい「F.F.マルシェ 芦屋」は、大阪の激安スーパー「スーパー玉出」を経営する、フライフィッシュ(大阪市)の新業態だ。従来のイメージとは正反対のセレブを対象としたビジネスを新規事業に選んだと話題になった。
また、既存の高級スーパーの移転やリニューアルも相次いでいる。
芦屋市民の台所ともいうべき、「いかり 芦屋店」は21年8月17日から全面改装の工事を行うために休業。同年12月1日にリニューアルオープンした。すぐ近くに「ビッグビーンズ」が新規オープンするので、危機感を抱いたのだ。
JR芦屋駅の南口にあった有機野菜や自然食品を販売するオーガニックスーパー「オーガニック・プラザ」は、21年9月、北口の複合施設「ラ・モール芦屋」に移転している。芦屋はオーガニック物産店の集積地でもある。
このように、人口規模では10万人にも届かない芦屋で、新旧入り乱れての高級スーパーの激しい販売合戦が繰り広げられているのだ。これは、平成以来、デフレに沈んでいる日本では極めて異例な地域性といわざるを得ない。
全国的にもてはやされているスーパーは「業務スーパー」、関東の「オーケーストア」、関西の「ラ・ムー」など、激安を売りにする店ばかりだからだ。
確かに芦屋は、豪邸のスケールでは、田園調布や白金を上回るといわれるほどで、桁違いのお金持ちが集まっている。しかも、芦屋マダムは単に金銭的余裕があるだけでなく、お値打ち感のある商品を見抜く能力が高いとされている。
芦屋市民に支持され成功してこそ、本物の高級スーパー。そこで、東京から、大阪から、京都からも、気合を入れて進出してくるチェーンが後を絶たない。
一般論でいうと、日本の小売業界では1万人程度の小商圏を対象とする、ほぼ食品スーパーのような激安ドラッグストアが急速に店舗を増やしている。「ウエルシア薬局」「ディスカウントドラッグ コスモス」「スギ薬局」のような店だ。
ところが、芦屋ではそのような現象は確認できない。コンビニもさほど多くない。代わりに小商圏を対象にした高級スーパーが増えている。
なぜ今、芦屋で高級スーパーが沸騰しているのか。現地を訪問してみた。
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