「スーパー玉出」運営会社も参入! セレブの住む「芦屋」で高級スーパーの競争が激化している理由長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)

» 2022年08月06日 07時15分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

阪神芦屋駅周辺部

 阪神芦屋駅は1日の乗降客が2万5000人ほどで、市内で2番目に利用者が多い駅だ。駅北口の東側にはかつては本通り、甲陽市場、三八通りといったにぎやかなアーケード商店街があった。しかし、95年の阪神・淡路大震災でアーケードはなくなった。

昭和47年頃の甲陽市場(出所:芦屋市役所公式Webサイト)

 駅前にある「パントリー芦屋店」は2002年のオープンで、大近(大阪市)が経営。大震災後、買い物が不便になった近隣住民の食卓を支えている。

パントリー芦屋店

 大近は、パントリーまたはラッキーの屋号で、関西、関東、名古屋、広島に32店の食品スーパーを展開。同店では極力食品添加物を使わない、自然派の商品を主力に販売している。ハム・ソーセージ、麺類、だし、豆腐、おにぎりなどは自社製造だ。青果も有機栽培、特別栽培を中心にそろえている。珍しい輸入食品やスパイスなども品ぞろえが豊富である。

 一方、芦屋川の西側、神戸市との市境近くにあるのが、「パル・ヤマト 芦屋店」。1998年のオープンで、大震災後の芦屋復興を支えた。

パル・ヤマト芦屋店
パル・ヤマトの青果売場イメージ(出所:パル・ヤマト公式Webサイト)

 パル・ヤマト(神戸市)は、阪神間に5店を構える。芦屋店は現存する店舗では最古で、ブランドを確立した店である。

 大型のコンビニくらいの広さで、小ぶりなスーパーだが、魚介、青果、精肉といった生鮮三品が品質が高い割りにはリーズナブルで、生鮮のコスパではいかりを凌ぐと、愛用する主婦も多い。食堂、居酒屋を営むプロの飲食店も、一般住民に混じって買いに来るほどだ。

阪神打出駅周辺部

 芦屋市内には4つの駅があるが、乗降客数の多い順から、JR芦屋、阪神芦屋、阪急芦屋川、阪神打出となる。 阪神打出駅周辺部には高級スーパーはなかったが、今年4月にF.F.マルシェが新規オープンした。阪神打出駅の乗降客数は1日平均1万4000人ほどだ。

  F.F.マルシェは駅から歩いて5〜6分ほどの阪神国道(国道2号線)沿いにあり、すぐ近くにマクドナルドやKFC、グルメ回転寿司・にぎり長次郎といった大手外食のロードサイド店がある。国道沿いには高級なマンションが並んでいるが、市内では高級スーパー空白地帯になっていた。なかなか巧みな立地だ。

 従来、近隣の住民は、主に西宮市との市境にある「ダイエー東芦屋店」へ買物に行っていた。

F.F.マルシェ、こだわりのグロサリー商品
F.F.マルシェ。十八穀米ごはん膳

 しかし、芦屋市東部の住民にとっては、2021年9月3日に、西宮市内の芦屋市境の近くにオープンした郊外型ショッピングセンター、「夙川グリーンプレイス」が身近になっている。核店舗は「パル・ヤマト夙川店」で、神戸の人気カフェ「マザームーンカフェ」、グルメ回転寿司「金沢まいもん寿司」、ドラッグストア「ココカラファイン」など14店が入居。

 商圏的に、F.F.マルシェはダイエー、夙川のパル・ヤマトに挑戦状を突きつけた。

 F.F.マルシェはスーパー玉出とは打って変わって、こだわりの高級食品を並べているが、専用の駐車場もなく現状の集客は想定より苦戦しているのではないかと見受けられる。

 F.F.マルシェの建物は二層になっているが、1階から2階に行く階段が分かりにくく、2階のこだわりの加工食品を集めたグロサリーに人があまり入っていない。1階だけを見て帰る人が多く、品ぞろえが少なく見えてしまっているのが難点だ。

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