コロナ第7波の襲来で、東京都の新規感染者は連日3万人を超えている。今のところ「行動制限のない夏休み期」になるとはいいながら、旅行業界、外食業界などでは、予約キャンセルが出始めており、先行きに影を落としている。
新型コロナウイルスが流行し始めてからの2年半、飛沫で感染するというウイルスの特徴から、外食業界は厳しい行動制限を受け、大きなダメージを余儀なくされてきた。ただ、終息はまだまだ遠いとは言いながら、ワクチンも治療薬もなかった初期とは異なり、感染法上の位置付けも2類相当から5類相当へと変更が議論される今、アフターコロナのビジネス展開を考える時期にきていることは確かだろう。
コロナ禍によって外食産業の事業環境はどのように変化したのか、そして今後はどうなっていくのだろうか。
外食の業界団体である日本フードサービス協会のJF外食市場動向調査では、2019年と比べて直近の外食業界の売り上げと店舗数がどのように変化したかのデータを公表している(図表1)。第6波がピークを越えた22年3〜5月の時点では、業界全体として売り上げは19年比の8〜9割で推移している。店舗数は5〜6%減少となっており、依然として厳しい状況に置かれていることが分かる。
業態によって、状況は大きく異なる。ファストフードはコロナ前を上回る売り上げを確保しているのに対して、ファミレスは7割程度、ディナーレストランが6割前後、パブ居酒屋は3〜4割程度の売り上げで推移していることが分かる。大まかに言えば、ディナー、アルコール比率の高い業態ほど大きいダメージが続いているというのは、ご想像の通りであろう。
コロナ対策による営業制限が緩和した6月には、ファストフードは+5.5%と好調、ファミレス、ディナーレストランは8割まで回復した。パブ居酒屋は、大幅に回復は見せたが、それでも6割まで達していない。
ビジネスパーソンの飲み会のような飲食機会がまだ戻っていない上に、「2軒目需要」が大幅に減少して、2回転以降の時間帯が厳しいとも聞く。夜営業中心の業態の苦境が続く中、第7波の襲来によって回復の腰が折れる兆候も報じられている。行動制限がかからないとしても、自粛ムードが濃くなっており、本格的な回復はまだ見通せない状況にある。
そんな状況を前にしてではあるが、店舗数の減少は必ずしも悪い影響だけを及ぼすわけではない。業態別に見ると、飲み屋業態は極めて厳しい環境が続いたため、店舗数が2〜3割も減少している。その分、競争環境は緩和しているということであり、この需要がコロナ前の7〜8割まで回復するなら、競争力ある企業にとっては、シェア拡大のチャンスと言える。財務に余裕のある関連業界の企業は、既にここを狙って準備を進めているはずだ。
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