すき家は増収、吉野家は減収のワケ コロナ禍後、V字回復する外食チェーンは?小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

» 2022年08月09日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]
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“飲食店経営者”という目標を見せる「王将大学」

 「餃子の王将」で知られる王将フードサービスは、調理技術を学ぶ「王将調理道場」、店舗経営ノウハウを学ぶ「王将大学」といった社内教育を充実させ、スキルアップを支援するとともに、フランチャイズ加盟店としての独立を支援するという仕組みで有名だ。

 社内でスキルアップしてキャリアアップしていくだけはなく、経営者として独立するという目標が示され、実際にFC加盟店の半分は社員独立によるという体制ができている。この仕組みが確立されてから定着率は劇的に改善したというのだが、こうした社内の空気はパート・アルバイト社員の士気にも大いに影響しているという。

 アフターコロナの外食企業の成長は、この危機を生き抜いた残存者利益をどれだけ実現するか、ということになる。厳しい経営環境に耐えて、いかに店舗を温存した、ということが前提とはなるのだが、箱だけで商売ができる訳もなく、人材の確保とその維持ができる企業であることが併せて必要になるはずだ。

 人材確保の困難さはこれまでの比ではなくなるため、多少時給をアップしたくらいでは、人材確保は出来ないだろう。かつてのチェーンストア理論では、人材は労働力という名の物理的な要素と見なされていたが、これからはブラックやグレーな企業には人材は集まらない。

外食ビジネスの存続は、人材の確保と切り離せない(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 賃金だけでなく、従業員個人のキャリアアップと引き換えに、貢献してもらうという発想がないのなら、労働集約的な外食ビジネスでの存続は危ういのである。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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