フェイクニュースの拡散にとどまらず、台湾では企業や公的機関へのサイバー攻撃も相次ぐ。現地メディアによると、コンビニや主要駅の電光掲示板で、ハッキングとみられる障害が発生。コンビニチェーンのセブン-イレブンでは、複数の店舗の電光掲示板に「ペロシ氏は台湾から出て行け」と表示された。
現地メディアによると、デジタル担当大臣のオードリー・タン氏は3日の会見で「前日の2日だけで、公的機関に対するサイバー攻撃が過去最多時の23倍に上った」と公表した。
蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は4日夜に公開したビデオメッセージで、「中国は今後数日間、集中的な『情報戦』を仕掛けてくるだろう」と言及。具体的に「公的機関や企業の情報セキュリティへの侵害」「フェイクニュースによる人心の攪乱(かくらん)」を挙げ、企業に対応の強化を求めるとともに、報道機関にも「中国発の情報について真偽をしっかり確認し、軽率に引用しないでほしい」と訴えた。
中国と台湾をめぐる「情報戦」はこれまでも繰り返し起こっており、日本で起きた事件や事故が発端となったケースも複数ある。
直近では7月8日、安倍元首相が銃撃を受け死亡したことを伝えるニュースのコメント欄に「台湾人が安倍氏の死を喜んでいる」といった内容のコメントが多数書き込まれた。
これに対し、複数の台湾人ユーザーから「コメントは日本と台湾の関係を壊そうとしている中国人ユーザーが書き込んでいる」と反論するツイートが広がった。
現代中国・台湾論を専門とする法政大学の福田円教授は「誰が情報を発信したのか断定することは難しいが、状況を総合的に判断すれば、情報工作の可能性は否定できない」と説明する。
福田教授は近年の日台双方が良好な関係を築いていることを説明。台湾が新型コロナウイルスのワクチン不足に陥った際、日本からのワクチン提供に尽力したのが安倍氏だった――という認識が台湾社会で広く浸透していたことなどを挙げ、「複数の情報を客観的に眺めれば『台湾人が安倍氏の死を喜んでいる』というコメントが大多数の意見ではないことは容易に理解できる」と説明する。
その上で、偽情報に惑わされないためには「情報自体を見るだけではなく、情報が出てくる背景や文脈に関心を払う必要がある」と強調する。
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