「ペロシ氏の飛行機撃墜」「安倍氏の死祝う」――企業SNSの“なりすまし被害”やフェイクニュースが増加コンビニ店がハッキング被害も(3/3 ページ)

» 2022年08月13日 06時00分 公開
[濱川太一ITmedia]
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フェイクニュースが自殺を招いた事例も

 日本が中台の「情報戦」の舞台となった別のケースに、18年9月に関西空港で起きた事例が挙げられる。台風21号が関西地方に上陸し、関空の滑走路が冠水。空港に多くの観光客が取り残される中、SNSに「中国の大使館がバスを派遣し、空港から救出した」という情報が流された。これは後になってから、フェイクニュースだったことが台湾ファクトチェックセンターの調査で判明している。

 このフェイクニュースを発端に、台湾のネット空間では「中国は積極的に対応しているのに台湾は何をしているんだ」と当局への批判が殺到。台湾メディアも連日、台湾の窓口機関「駐大阪経済文化代表弁事処」を批判する報道を繰り返した。その結果、代表処のトップが自ら命を絶つことになった。

フェイクニュースが人を自殺に追い込むこともある(画像はイメージ、ゲッティイメージズ)

 この悲劇を契機に、台湾ではフェイクニュースの危険性に対する認識が広まり、フェイクニュースを厳罰化する法整備も実施。19年5月、災害関連のフェイクニュースを流布した人物に、10年以下の懲役(死者が出た場合は最高で無期懲役)を科すことを盛り込んだ法改正案が台湾立法院で可決された。

日本企業も無縁ではない偽情報やサイバー攻撃

 中台双方とビジネス交流が盛んな日本企業にとっても、フェイクニュースやサイバー攻撃の脅威は他人ごとではない。「Yahoo!ニュース」のSNSアカウントのようななりすまし被害に遭えば、偽情報の拡散によって、社会不安を招いたり、企業のブランドイメージ低下や信用失墜につながる恐れがある。中国やロシアの関与が疑われるサイバー攻撃も近年増えており、自動車メーカーの工場が停止する事態なども実際に起こっている。

 台湾では今回、店舗や公共機関の電光掲示板がハッキングとみられる障害を起こしたことを受け、サイバーセキュリティに関わる製品については安全性の高い製品に変更するよう義務付ける法整備も動き出しているという。

 日本企業も今回の中台間の動きを注視し、あらゆる事態を想定し備えを進める必要がありそうだ。 

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