2日目、午前6時にニワトリの声で目を覚ました。普段であれば二度寝を決め込む時間なので30分ほどニワトリの声と格闘したものの、しぶしぶ起床。東京のような辟易する暑さがなかったのとポジティブな締め切り意識も働いたようだ。午前8時30分に始業。
昨日と気分を変えるために作業場を2階に変更した。眼前に広がる山と青空とそよそよと吹く心地良い風で集中力が高まっていると感じた。筆者の自宅のデスク前にも大きな窓があるものの、見えるのは道路挟んで反対側に住む住民のシルエットだけである。利便性と家賃の高さに特化したコンクリートジャングルに自然環境を求めること自体が間違っているかもしれないが、八女市の広大な自然はしばしば筆者に「東京にいる意味」を考えさせた。
原稿が重なったタイミングなど、遅くまで働くことも多い筆者だが、ワーケーション中は明確に午後7時までに退勤すると決めていた。そうすると必然的に後回しにしたタスクに着手しなくてはいけなくなる。普段であれば「まだ時間あるし、後でやろう」と気が乗らないタスクを後ろに追いやり、最終的には「疲れたから明日でいいや」を次の日もその次の日も繰り返しているわけだが、今回は案外すんなりと着手できた。やり始めたら「意外とこんなものか」で完了するタスクも少なくなかった。
東京でもポジティブな締め切り意識が働くことはもちろんある。しかし、なぜだか全てのタスクを完了させられないことも多い。今回のワーケーションを通して、筆者の場合はその違いが「疲れ」にあるように感じた。東京と八女では溜まる疲労が異なる。東京ではオーバーワークや飲酒で脳や目、肝臓など身体の器官に疲れが溜まるイメージがある。もちろん、PCを使う仕事をしている分、八女でも脳や目の疲労は溜まる。しかし水遊びや散歩などといった身体を動かすことによる心地良い疲れが多くを占めているように感じる。適度な疲労が良質な睡眠を誘い、それが日中の高いパフォーマンスにつながっているのかもしれない。
筆者はもともと自然が好きなこともあり、この環境がかなり気に入っていた。何気なく「いいな〜。住みたいな」と口にすると坂本さんは「空き家紹介するよ」と提案してくれる。住民の高齢化や少子化に伴い空き家が増えているようだ。
「関係人口の増加が目的だから、別荘みたいな使い方を許可してもらえるかは分からないけど、1年の半分くらい滞在してくれるなら貸してくれる人も多いと思うよ」(坂本さん)
筆者の会社のフルリモート体制は、2時間以内に出勤できる場所という制限付きだ。加えて、編集記者という仕事の特性上、移住のハードルは高い。しかし、将来的な選択肢の一つになり得ると感じた。移住を検討しているかどうかは不明だが、筆者の滞在中にも複数の宿泊者がいた。コロナ前には外国人の訪問も多かったという。いきなり移住するのは家探しや地域住民との関係構築にかなりの体力を使いそうだが、ワーケーションやプチ移住を通じてそういった問題を小さくできるように感じた。
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