フロッピーディスク(FD)、CD-ROMなどの記録媒体が、民間企業からの申請手続きを煩雑にしているとして、デジタル庁は8月30日、行政手続き時に使用媒体を指定する法令について、撤廃する方針を示した。早ければ秋の臨時国会に法案を提出し、成立を目指す。
規制改革と行政改革を議論する「デジタル臨時行政調査会」(デジタル臨調)の作業部会で提案された内容で、対象としたのは「光ディスク」「CD-ROM」「磁気ディスク」「光磁器ディスク」「フレキシブルディスク」「磁器テープ」。同庁が公開した資料によると、行政手続きにおいて、FDなど記録媒体の名称を含む規定が計1894条項あることが調査で分かったという。
このうち、「光ディスク」「磁気ディスク」「磁気テープ」など媒体を指定する法律の規定は157条項、政令では148条項、府省令では1589条項それぞれ見つかった。官公庁が記録媒体を指定していることで、企業側が媒体提出のため、申請窓口に持参する必要があり、手続きのオンライン化の阻害要因になっていた。これに加え、記録媒体の紛失リスクもあった。
中にはFDのように、社会全体で使用頻度が減少している記録媒体をECサイトで探し、企業側が行政手続きのためのみに購入しているケースもあったという。
実際、行政側のルールによって企業のDX推進が阻害されているケースも発生している。山口県阿武町で発生した4630万円の給付金誤入金では、金融機関との入金データのやり取りにFDが使用された点も注目された。同町の職員は振込先のデータをFDに入れ、山口銀行の窓口に提出した。
入金を受け付けた山口銀行は、21年5月に、FDなどによる振り込みや口座振替依頼データの授受の新規受付を停止していたものの「21年5月以降、FDを利用するお客さまには別の手段への移行を案内しているが、継続要望があれば対応せざるを得ず、全廃は難しいのが実情」としている。行政側の都合に、民間企業が巻き込まれている一例といえるだろう。
こうしたことなども背景に、データ授受などに媒体を要さないオンライン手続きを求める要望が、建設業界や金融業界などを中心に経済界から計14件挙がっていた。
デジタル庁は今後、記録媒体の制限を撤廃した改正税理士法を参考に、提出媒体の指定撤廃に向け、各省庁に法令の見直しや点検を指示する方針。同庁の担当者は「行政側の都合に縛られていた民間企業にとっては朗報ではないか」との受け止めを示している。
デジタル庁はその他、行政手続きのデジタル化を阻害する法案が国会に提出されないようチェックする「デジタル法制局」の設置や、クラウドなど新技術の導入を阻害する法令についても対応を進める方針も明らかにした。
岸田首相からは「デジタル改革はスピード最優先で行い、現状見つかっている“アナログ規制”以外も見つかり次第早急に洗い出し、改革を断行してほしい」との指示があったといい、河野太郎デジタル相は閣議後の記者会見で「デジタル原則への適合を強力に進めたい」と話した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング