減塩食の「物足りない感」を解決 “しょっぱく”なるスプーンとお椀、キリンと明大が共同開発23年末の市販化目指す(2/3 ページ)

» 2022年09月07日 20時15分 公開
[菊地央里子ITmedia]

電気味覚で物足りない……を解消

 そこで同社と宮下研究室は、19年から「電気味覚」の共同研究を開始。22年4月には箸型デバイスを開発し、減塩食を食べたときに「感じる塩味が1.5倍程度に増す」ことを世界で初めて確認した。これは、人体に影響しない微弱な電流を用いて、食品中のナトリウムイオンの働きをコントロール。疑似的に“しょっぱさ”が増したように感じることができるもので、こうした効果をもたらすデバイスを、「エレキソルトデバイス」と命名した。

塩 22年4月に発表した箸型デバイス(プレスリリースより引用)
塩 ”しょっぱさ”が増す仕組み(同社提供)

 その後も検証を重ね、普段の食事でより使用しやすいスプーンとお椀型のデバイスに進化させた。使い方は、スプーンの柄、お椀の側面にあるスイッチで電流を入れ、4段階の中から好みの味の強度を選択。スプーンの柄、お椀の底を手で持つことで効果を発揮する。

塩 市販化を目指すスプーンとお椀型のデバイス(体験会で記者撮影)

 スプーンやお椀は、バッテリーなどが内蔵されているものの、普通の食器とほぼ同じ感覚で使用可能。実際に使用して減塩ラーメンを食べてみたところ、使用後は塩味が増したことを実感した。0.5〜1.0秒かけて電流を流すため普段よりもややゆっくりしたペースで食べることにはなるが、減塩食の「物足りなさ」は解消されたように感じた。

塩 4段階はサイドのスリットで確認できる(体験会で記者撮影)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.